CoinDesk JAPANを運営するN.Avenueの代表取締役社長である神本侑季が編集著者を担当した書籍『Web3・暗号資産 13人の未来予測 ーブロックチェーン・ビットコイン・投資動向まで、新時代を乗り切る価値革命の地図とコンパス』(朝日新聞出版刊)が8月20日に出版された。
これを記念して前日19日18時から「Web3本出版記念トーク in X spece」が、2章 特別対談「ブロックチェーンの本質とWeb3の未来」に登場の渡辺創太氏(Startale Group CEO)、6章「成長する暗号資産市場、その投資動向と将来図」を執筆した廣末紀之氏(ビットバンク株式会社 代表取締役社長CEO)、8章「ステーブルコインと決済インフラの未来」を執筆した齊藤達哉氏(Progmat, Inc. 代表取締役Founder and CEO)をゲストに招いて開催された。進行は編集著者で1章「価値革命は静かに始まっている」を執筆した神本が務めた。
冒頭、神本が本の全体像を紹介したあと、3人がそれぞれ担当した章の内容やポイントを紹介、さらに前日の18日に国内での円建てステーブルコイン発行に向けた大きなニュースが伝えられたことを受けて、ステーブルコインをはじめとする最新のWeb3/暗号資産事情について語り合った。予定の1時間を超えて盛り上がった議論は、ぜひ、アーカイブを聞いて欲しい(本のプレゼント企画も実施中!)。この記事では、その一部をお伝えする。
📚【8/19(火) 18:00|出版記念トーク in Xスペース】
— CoinDesk JAPAN (@CoinDeskjapan) August 15, 2025
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すべてがオンチェーン化する未来
特別対談として、安宅和人氏(慶應義塾大学 環境情報学部教授)と対談し、最近、ニューヨークに拠点を移した渡辺氏は「アメリカでのWeb3の進捗はトランプ政権になってから、良い意味で激しい」と切り出し、アメリカでは「Web3」という言葉は使われず、「デジタルアセット」「オンチェーン」という言葉が使われていると指摘した。
さらにSEC(米証券取引委員会)が発表した「Project Crypto(プロジェクト・クリプト)」に触れ、紙ベースから電子取引(オンライン)に移行した歴史をSECが振り返り、SEC長官が自ら「この先はオンチェーン取引が来る。アメリカはこれを技術でリードしなければならない」と述べていることを紹介した。
渡辺氏は「すべてがオンチェーン化していく未来が来るだろうと思っている」と述べ、そうなったときには、日本は金融だけでアメリカと勝負することは難しく、日本の強みであるエンタメと掛け合わせることが重要になるとの考えを明らかにした。
安宅氏との対談については、「AI × ブロックチェーン」の可能性について議論したと述べ、忘れてはならない視点は「AIはすでに70年くらいの歴史がある一方で、Web3はまだ17歳くらい。これから大きな可能性が広がる」と述べた。
日本の暗号資産市場の未来を決する「天王山」
廣末氏は業界で今年、大きなテーマとなっていること、つまり、暗号資産を規制する法的枠組みを現行の「資金決済法」から「金融商品取引法(金商法)」に移行させることの是非を問う議論が始まっていることに触れた。
7月31日には金融庁で「暗号資産制度に関するワーキング・グループ(WG)」の第1回会合を開催され、廣末氏は業界団体である日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)の会長としてこの議論に加わっていると述べた。
「かなり大きな構造変化が行われる。暗号資産を2つのタイプに切り分ける話をしており、どういう基準で切り分けるのかが非常に難しい」と廣末氏は語り、アメリカで議論が進む「クラリティ法」を参考にしつつ、「かなり細かい、マニアックな議論を協会の中でやりつつ、規制当局と話を続けている」と述べた。
また、過去の経緯を振り返りつつ、「以前は、詐欺師呼ばわりされることもあったが、金商法に移行すると、暗号資産の“金融商品化”の話も広がる。アメリカでは暗号資産ETF(上場投資信託)の運用資産残高はかなり積み上がっている。さらに株式のトークン化、広義のRWA(現実資産)のトークン化、オンチェーン化が期待できる」と続けた。
さらに「市場は、伝統的な金融と暗号資産が融合して、新しいビジネスが展開できる可能性が広がる。今回の規制改正は、日本の暗号資産市場全体を占う、非常に重要な “天王山” になる」と語った。
業界にとって「ウェイクアップコール」
齊藤氏は「せっかくの機会なので、渡辺氏、廣末氏とのクロストークに時間を割きたい」とし、自身が担当した章と「Web3という言葉が苦手な人間の1人」である自身が、この本をどう見ているかについてはすでに記事にまとめて公開したと述べた。
齊藤氏のnote:ステーブルコインと決済インフラの未来 ‐共著書籍の個人的所感を交えて‐
さらに、ちょうど前日に国内での円建てステーブルコイン発行に向けたニュースが伝えられたことについて、「今までステーブルコインという概念を知らなかった方も含めて認知が進んだ」とし、もう一つポジティブな効果としては、業界全体にとって「ウェイクアップコールになった」と述べた。
つまり、円建てステーブルコインは大きの金融機関が関心を持っているものの、実際に検討を進めると、ユースケースや収益化など、さまざまな壁にぶつかる。「しかし、昨日のニュースによって、円建てステーブルコインが大きな注目を集めていることを業界関係者は事実として受けとめた。注目され、モメンタムがあることはまず最低限重要だと思う」と続けた。
ステーブルコインに関連してニューヨークを拠点にする渡辺氏は、最近、アメリカの暗号資産業界は、一つの事業だけでなく、「複数の事業を走らせて、そのシナジーを狙うようになっている」と指摘。暗号資産取引所Coinbaseがイーサリアム・レイヤー2の「Base」を持ち、さらにウォレットアプリを「Base App」に進化させている事例などをあげ、「ステーブルコインと取引所、あるいはチェーンなど、ステーブルコインと何かを組み合わせると強力なビジネスが生まれるはず」と述べた。
その後、議論はステーブルコインのユースケース、伝統的な金融機関のシステムとステーブルコインの組み合わせ、ホールセール決済での可能性、さらには日本のコンテンツとの組み合わせ、秘密鍵を保有せずにスマートコントラクトで管理する「スマートウォレット」などUXの進化、伝統的金融に及ぼす影響、AI×ステーブルコイン、現状の規制や金融機関の抱える課題、グローバル市場でのスタートアップの戦い方など、さまざまな方向に広がった。

書籍概要
タイトル:『Web3・暗号資産 13人の未来予測 ブロックチェーン・ビットコイン・投資動向まで、新時代を乗り切る価値革命の地図とコンパス』
URL:https://www.amazon.co.jp/dp/4022520744/
著者:神本侑季(N.Avenue株式会社/CoinDesk JAPAN 代表取締役社長)、安宅和人(慶應義塾大学 環境情報学部教授)、渡辺創太(Startale Group CEO)、平将明(衆議院議員、デジタル大臣)、鳩貝淳一郎(日本銀行 FinTech副センター長)、牛田遼介(金融庁総合政策局総務課国際室 国際企画調整官)、溝端悠太(金融庁総合政策局フィンテック参事官室 課長補佐)、廣末紀之(ビットバンク株式会社 代表取締役社長CEO)、佐々木俊典(野村ホールディングス株式会社 デジタル・アセット推進室長)、齊藤達哉(Progmat, Inc. 代表取締役Founder and CEO)、吉田世博(株式会社HashPort 代表取締役CEO)、熊谷祐二(Startale Group CSO)、落合陽一(メディアアーティスト)
目次:
■第1章 価値革命は静かに始まっている
■第2章【特別対談】ブロックチェーンの本質とWeb3の未来
■第3章 国家戦略としてのWeb3と地方創生
■第4章 ビットコインと新たな価値交換の仕組み
■第5章 Web3・デジタル資産領域における金融法制の進展
■第6章 成長する暗号資産市場、その投資動向と将来図
■第7章 セキュリティトークンが拡張する資本市場の未来
■第8章 ステーブルコインと決済インフラの未来
■第9章 ウォレットとマスアダプション
■第10章 エンターテインメント×Web3の挑戦
■第11章 デジタルアイデンティティとWeb3
|文:増田隆幸
|画像:N.Avenue


