トヨタ・ブロックチェーン・ラボは8月20日、モビリティエコシステムに信頼を組み込み、その価値をグローバルに流通させることを目指すブロックチェーン構想「MON(Mobility Orchestration Network)」に関するテックペーパーを公開した。
同ラボはペーパーの冒頭で、本構想の執筆にあたりL1ブロックチェーンAvalancheの開発元であるAva LabsおよびTISから技術的サポートを受けたとし、感謝の意を表明している。
MONは、複雑な権利関係を持つRWA(Real World Assets:実物資産)としてのモビリティをブロックチェーン上で表現し、新たな価値循環を創出する試みである。
同ラボによると、モビリティは製造、所有、登録、保険といった複数の主体が関わる「社会システム的存在」であり、その複雑性が「組織・業界・国家」という3つのレベルで価値流通を阻害していると分析。

この課題に対し、MONは3段階のブリッジ(橋)を架けるコンセプトを提示している。まず複数主体にまたがる証明を束ねて「信頼」を確立し、次にその信頼を基に金融やサービスといった異業種を繋いで「価値循環」を始動させ、最終的には共通プロトコルとして国境を越えた「エコシステム」を繋ぐ構想だという。
このコンセプトを実現する中核には2つの設計思想が据えられている。
一つは、モビリティのデジタルIDを公的側面と現場の運用側面で分離管理する「モビリティ・オリエンテッド・アカウント(MOA)」。もう一つは、非代替的な個々の車両を、ポートフォリオ化を経て代替可能な証券トークンへと段階的に転換する「ファンジビリティ・ラダー」である。

プロトタイプの技術基盤にはAvalancheが選定され、ERC-721などの標準規格を組み合わせるコンポーザビリティを重視する方針が示されている。同ラボは、新興国でのBEV(バッテリー式電気自動車)普及支援や、地域へのロボタクシー導入、物流の効率化といったユースケースを提示している。
|文:栃山直樹
|画像:リリースから


