ゆうちょ銀行が2026年度にも貯金者向けにデジタル通貨を導入すると日経新聞が報じた。セキュリティ・トークン(デジタル証券)などの金融商品の決済に使うほか、将来的には地方自治体の補助金の支給手段としての活用も視野に入れるという。
報道によると、インターネットイニシアティブ(IIJ)グループのディーカレットDCPが開発するデジタル通貨「DCJPY」を導入する。ゆうちょ銀行の利用者は、貯金口座にDCJPY用の口座をひも付け、残高のうち希望額を1円=1DCJPYとして交換できるという。
ステーブルコインとの違い
今回の仕組みは、日本円(今回のケースでは、貯金口座)に裏付けられ、日本円と同等の価値を持つという点で、先日、スタートアップ企業のJPYCが国内の発行体として初の認可を取得したステーブルコイン(日本の法規制では「電子決済手段」)と似ている。だが、DCJPYはステーブルコインではなく、「トークン化預金」と呼ばれるものだ。
トークン化預金とは、銀行預金(ゆうちょ銀行の場合は、貯金)をブロックチェーンに乗せたものだ。既存の銀行預金や郵便貯金もすでにデジタル化され、振込や決済に活用できているが、ブロックチェーンを基盤にする店が大きな違いとなる。
ステーブルコインは基本的には、パブリック・ブロックチェーンを基盤に、誰でも、グローバルに利用できるのに対し、トークン化預金は金融機関など、許可された参加者のみで運営されるパーミッションド(許可型)ブロックチェーン上で発行される。
ディーカレットは2024年9月、DCJPYの事業基盤強化に向けて、約63.5億円を調達。今回、ゆうちょ銀行が加わることで、ほぼ日本の人口に匹敵する約1億2000万口座、200兆円規模の貯金がDCJPY発行の潜在的なベースとなり、その存在感は、日本のステーブルコイン市場/トークン化預金市場において一気に拡大することになる。
セキュリティ・トークン決済へのハードル
報道では、まずはDCJPYを利用してセキュリティ・トークン(ST)を購入できるようにするとされている。ただし現状、STも規制や信頼性・安全性の観点から多くはパーミッションド・ブロックチェーン上で発行されており、相互運用性をどう実現するかが課題となる。
いずれにせよ、JPYCの認可で大きな注目を集めた日本のステーブルコイン市場、そしてトークン化預金市場がさらに大きく動きそうだ。
|文:増田隆幸
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