ソラナが可能にしたHuma Financeの革新──Amazonの裏側で動き出した「PayFi」の真価

あらゆる価値がトークン化され、インターネット上を自由に行き交う「インターネット資本市場(Internet Capital Markets:ICM)」の基盤レイヤーを目指すソラナ(Solana)。シリコンバレーのフィンテック出身者が設立した「Huma Finance」は、まさにソラナが掲げる目標を体現する存在だ。

「インターネット資本市場」を実現するには暗号資産のみならず、伝統的金融商品などのRWA(Real World Asset、現実資産)をトークン化・オンチェーン化し、さらに暗号資産ユーザーを超えて、広くサービスとして提供することが不可欠になる。Humaは「PayFi」という新しい概念を切り拓き、あらゆる場所・あらゆるタイミングで即時に流動性へアクセスできる決済ファイナンスのインフラを構築。現在、取引高は約60億ドル(約8800億円)にのぼる。

Humaが掲げる「PayFi」とは何か、現在のユーザー像、さらにAmazon加盟店に向けた新サービスなどについて、共同創業者のエルビル・カラマン(Erbil Karaman)に聞いた。

「休みなく動く世界」のためにお金の動きを加速

──Huma Financeが掲げる「PayFi」とはどういうコンセプトか。そしてHumaはどんな企業なのか。

「PayFi」とは、休みなく動き続ける世界のために、お金の動きを加速させるものだ。つまり、PayFiとは、決済と資金調達を中心に構築されたエコシステムであり、スイフト(SWIFT:国際銀行間通信協会)による送金やプレファンディング(迅速な国際送金のために事前に資金を世界各地に置いていくこと)といったレガシーな方法を、ブロックチェーン、ステーブルコイン、プログラム可能な流動性で置き換えていく。

Huma Financeは、世界初のPayFi企業として設立され、グローバルに事業を展開している。ネットワークはすでに2年半以上稼働している。

──Humaが解決しようとしている最大の課題とは?

世界は常に、休むことなく動き続けている。だが現状、お金の動きはそうではない。一般的な決済には、概ね3日、ときにはそれ以上の日数がかかる。しかし、私たちは5年以内にすべての決済は「T+0」、すなわち即時決済が実現すると考えている。

Humaは、ステーブルコインとブロックチェーンを活用して、決済機関やグローバル企業が決済をより効率的かつ迅速に行えるよう支援している。すでにクレジットカード企業、ECサイトの加盟店ネットワーク、送金企業、国際的な決済企業と連携しており、そうした企業は複雑な技術オペレーションを理解する必要はない。

つまり、Humaはエンタープライズ・ソリューションであり、決済企業、グローバル企業をオンチェーンへと導く存在だ。

アジアのAmazon加盟店にリアルタイム支払いを提供

──取引高は約60億ドルに達している。主なユーザー層は?

いくつか急成長しているセグメントがある。最初のセグメントは送金企業だった。ドバイ最大の国際送金企業LuLuをはじめ、米国のViamericas、欧州やシンガポールの送金企業などだ。

今、ステーブルコインを活用していない送金企業は、ネットワークを維持するために資金を世界各地に置いておく必要があり、世界中の銀行に口座を持たなければならない。しかし、我々のソリューションを使えば、ブロックチェーン上のステーブルコイン流動性を使うだけで、世界中の決済パートナーに資金を移動できる。銀行口座に資本を置いておく、つまり寝かせておく必要はなくなる。これは画期的なイノベーションだ。現在の約60億ドルの取引高の大部分はこの領域から生まれている。

さらにもうひとつ急成長しているユースケースがある。8月中旬にグローバル決済サービスを展開するArf、Geoswift、PolyFlowとの提携を発表したとおり、アジアのAmazon加盟店は我々のネットワークを利用して、リアルタイムで支払いを受けられるようになった。

Amazonを利用するユーザーにはほとんど知られていないが、Amazonには課題があった。購買者の多くは米国、EU、イギリスなどにいる一方で、加盟店の多くはアジアに集中しており、Amazonから加盟店への決済に時間がかかっていた。従来の伝統的な金融システムでは、購入者がAmazonに代金を支払ったあと、Amazonは期日ごとにまとめて販売者に代金を支払っていた。この支払いには最大90日ほどかかっていた。

しかし、私たちのPayFiネットワークを使えば、購入者がAmazonの支払いボタンを押した瞬間に、販売者である加盟店に即座に代金がステーブルコインで届くようになる。

──Amazonに対する売掛金(売掛債権)をトークン化し、それを担保に即日ステーブルコインで流動性を提供するサービスということだが、今後、取引高はどれくらい成長すると考えているか。

2025年末までに100億ドルを超えると考えている。さらに、新しいサービスも構築中で、まだ詳細は明らかにしていないが、Amazon向けに開発したものと同じソリューションを主要カードネットワークが利用できるようになる。これにより2026年には取引高は500億ドルを超えると予測している。

100万種類のステーブルコインが出現する

──PayFiではステーブルコインが重要な役割を担うことになり、登壇したセッションで「将来的には100万種類のステーブルコインが登場する」と発言していた。日本でも数多くのステーブルコインが登場するだろうか。

もちろんだ。戦略的には日本には強みがある。

まず、ステーブルコインは「発行」は容易だが、「ユースケースの創出」が難しい。だが日本は世界有数のFX市場を持っており、これは大きな強みとなる。つまり、円建てステーブルコインはグローバル市場で強みを発揮できる。効率的なFX市場があれば、米ドル建てやユーロ建てのステーブルコインと共存し、FX市場で効率的な取引・決算を実現できる。

もうひとつは、ソニー、トヨタ、三菱のようなグローバル規模のサプライチェーンを持つ企業の存在だ。サプライチェーンがグローバルに広がっている企業にとって、ステーブルコインの活用は大きなメリットとなる。

──今回の来日で、日本企業と具体的なビジネスの協議は進んでいるのか。

日本の大手金融グループやグローバルなステーブルコイン事業者とともに機関投資家向けのイベントを開催し、日本でのソリューション展開を模索している。複数のパイロット案件の可能性も検討しており、どのソリューションを活用するかは今後の議論で決定していく予定だ。

ホワイトハウスのジーニアス法署名式に参加

──ホワイトハウスでの「ジーニアス法」の署名式に参加したと聞いた。

ステーブルコイン普及に積極的に取り組んでいる企業として、数少ない招待企業のひとつとして参加した。ジーニアス法は非常に重要だ。なぜなら、ステーブルコインの最大のユースケースはグローバル貿易にあるが、米国が「ステーブルコインはダメだ」と言えば、それは成立しないからだ。

ジーニアス法は、ステーブルコインの発行を銀行に限定せず、あらゆるイノベーターや金融機関に発行を認める明確な枠組みを提供した。日本や韓国のような国々が追随すれば、貿易面での優位性を享受できるようになるだろう。

さらに、ホワイトハウスはジーニアス法以外でも明確な姿勢を示している。私たちはSECのアトキンス委員長たちとDeFi(分散型金融)の重要性について議論してきた。DeFiとステーブルコイン、つまり「インターネット資本市場」の活用は重要なテーマであり、中央集権的なシステムだけに依存していてはイノベーションは育たない。SECはパーミッションレス・アプリケーションをはじめとするDeFiイノベーションを支持する姿勢を明確にしており、次世代の金融システムにおいて米国が主導的立場に立つことを目指している。

「インターネット資本市場」をソラナとともに切り拓く

──Humaにとって、日本市場の位置づけは。

私たちはHumaをシリコンバレーで設立したが、最大のユースケースは米国外にあると考えて、グローバル展開の第一歩として最初の海外オフィスを香港に設けた。香港は東南アジアの決済ハブだからだ。

現在、取引高などを見ると、日本と韓国がステーブルコイン・エコシステムに積極的に参画し、金融機関による発行の検討が進んでいる。そして日本にはすでに効率的な決済システムがあり、貿易金融市場が存在する。日本で適切なパートナーとともに事業展開すれば、サービスを迅速に、効率的に提供できると考えている。

──いくつかのブロックチェーンの中から、ソラナ・ブロックチェーンを選んだ理由は?

Humaは最初のバージョンをイーサリアム(Ethereum)で構築したが、その当時、決済ネットワークをイーサリアムで運用することは非常に難しかった。取引手数料が高騰し、混雑によって決済まで数分かかることもあった。

昨年、ソラナ財団のリリー・リウ(Lily Liu)会長と会った際、リウ会長は「PayFiは、インターネット資本市場で最も重要な存在になる」と述べ、私たちにPayFiエコシステムを一緒に拡大させていこうと語った。その後、テストを行った結果、違いは明らかだった。非常に高速で、ソラナ上のステーブルコイン流動性は全チェーンの中で2番目に大きく、マスターカードやビザ、サークルといった多くの主要決済機関がすでにソラナ上で動いている。そうした決済機関とも簡単に連携できる。それがソラナを選んだ理由だ。

プロフィール

エルビル・カラマン(Erbil Karaman):世界初のPayFiネットワークであるHuma Financeの共同創業者。以前は、フェイスブック、ライドシェアのリフト(Lyft)、給与前払いサービスのEarnInといったシリコンバレーを象徴する企業でプロダクトとグロースに従事してきた。

現在も有力なWeb3プロジェクトへの投資家・アドバイザーとして積極的に活動しており、さらにThiel Foundationの「20 Under 20 Fellowship」(ヴィタリックがイーサリアムを構想した場として知られる)のメンターを務めた経歴を持つ。

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