- JPモルガンは、2700億ドル(約40兆円)規模のステーブルコイン市場が暗号資産市場全体の時価総額に連動しており、新規参入者は市場シェアを奪うのみにとどまると述べた。
- テザー社は米国の規制に準拠した新ステーブルコイン「USAT」を計画しており、サークル社のUSDCに対抗し、機関投資家顧客の獲得を狙っている。
- 一方、Hyperliquid、PayPal、Robinhood、Revolutといった企業が新たにステーブルコインを発行し、サークルはUSDCを暗号資産エコシステムの中心的存在として維持すべく、独自ブロックチェーン「Arc」を開発している。
JPモルガンのレポートによると、2700億ドル(約40兆円)規模のステーブルコイン市場は大幅に拡大しているものの、依然として暗号資産(仮想通貨)市場全体の時価総額の8%以下に過ぎず、この比率は2020年以来変わっていないという。
この状況は、暗号資産市場自体が大きく成長しない限り、今後の米国における新規ステーブルコインの発行は「ゼロサムゲーム」となる可能性が高いとアナリストは記している。
テザー社は、主に海外で利用されているUSDTに加えて、新たに米国の規制に完全準拠した「USAT」を発行する計画を進めている。USDTの準備資産は約80%が米国が求める要件を満たしているに過ぎないが、USATは全面的に準拠する形となる見込みだという。
ステーブルコインは、ドルや金といった資産に価値を連動させた暗号資産(編集部注:日本では法律で、暗号資産ではなく、「電子決済手段」と定められている)。暗号資産市場で重要な役割を担い、決済インフラとなっているほか、国際送金の手段としても活用されている。テザー社のUSDTが最大シェアを持ち、次いでサークルのUSDCが続く。
米国では7月にステーブルコインの枠組みを定めるジーニアス法が成立し、これを受けてサークルのUSDCをターゲットとした新たなステーブルコインの発行が相次いでいる。
ステーブルコイン市場は暗号資産市場の成長に依存
だが、新規参入者が規制整備を前にポジションを争う一方で、ステーブルコイン市場の成長は依然として暗号資産市場全体の時価総額に連動しているとアナリストは指摘した。
また、サークルはHyperliquid(ハイパーリキッド)のような競合にシェアを奪われつつある。独自チェーン上に構築されたDEX(分散型取引所)であるハイパーリキッドは、USDC利用の約7.5%を占めているほか、フィンテック大手のPayPal(ペイパル)、Robinhood(ロビンフッド)、Revolut(レボリュート)はそれぞれ独自ステーブルコインを展開しつつあるとJPモルガンは述べた。
こうした動きに対抗するため、サークルはUSDC取引に特化したブロックチェーン「Arc」を開発中で、スピード、セキュリティ、相互運用性を高め、USDCを暗号資産インフラの中心に据え続ける狙いだ。
ただし、際立った拡大がなければ、新たなステーブルコイン競争は、パイを広げるのではなく、シンプルな市場シェアの再分配にとどまる可能性があるとレポートは続けている。
USDCの供給量は725億ドル(10兆7300億円)に急増し、米大手投資会社バーンスタインの2025年の予測を25%上回っているとJPモルガンはレポートに記している。
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:USDT+USDCの供給量(TradingView/CoinDesk)
|原文:U.S. Stablecoin Battle Could Be Zero-Sum Game: JPMorgan


