デジタル資産トレジャリー企業が、バークシャー・ハサウェイのような存在に:アナリスト
  • シンクラシー・キャピタル(Syncracy Capital)のライアン・ワトキンス(Ryan Watkins)氏は、デジタル資産トレジャリー(DAT)企業が1050億ドル(約15.6兆円、1ドル=149円換算)相当の暗号資産(仮想通貨)を保有しており、長期的にはエコシステムに君臨するプレイヤーへと進化する可能性があると述べる。
  • 成功しているDAT企業は財団とは異なり、資産を事業運営、資金の運用・調達、さらにはガバナンスにまで活用していると同氏は考える。
  • ワトキンス氏はDAT企業の持つ潜在能力をバークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)のような巨大企業になぞらえているが、今日の投機的なフェーズを乗り越えて生き残れるのは、適切に管理されたDATだけだと警告している。

シンクラシー・キャピタルの共同創業者であるライアン・ワトキンス氏は、各種トークンを蓄える暗号資産トレジャリー企業が、投機的なラッパーから、長期的にはブロックチェーンの経済的なエンジンへと進化する可能性があると主張する。

デジタル資産トレジャリー(DAT)企業は、バランスシート上で暗号資産を取得・管理するために資金を調達する上場企業である。

現地時間9月23日のブログ投稿とXの関連スレッドにおいて、ワトキンス氏は、DATがビットコイン、イーサリアム、その他主要通貨を合わせて既に約1050億ドル(約15.6兆円)相当の資産を保有していると述べた。この規模感を市場参加者が十分に考慮した例はこれまでほとんどない。

同氏の主張の中心を占めるのは、これらの企業の一部が、ゆくゆくは保有するトークンのネットワーク内における資金調達、ガバナンス、成長を永続的に支える、運営企業へと成長する可能性があるという点だ。

投機の段階を超えて

ワトキンス氏は、注目されるほとんどが短期的な取引動向、つまり純資産価値に対するプレミアム、資金調達の発表、「次のトークンは何か」といった点に集中しており、全体像を見失っていると述べた。

「我々は、一部のDATが、暗号資産の財団に相当する営利目的の上場企業となり、資本の運用、事業運営、ガバナンスへの参加といった、より広範な権限を付与されるようになることを想定している」と同氏は記している。

一部のDATはすでにトークンの供給に対してかなりの部分を管理しているため、その資金は単なる金庫ではなく、エコシステムにおける政策立案や開発のてこ入れとして機能する可能性がある。

同氏は、規模が重要となる暗号資産ネイティブの事例を挙げた。ソラナでは、RPCプロバイダーと独自のマーケットメーカーがSOLを多くステークすることで、トランザクションのランディングとスプレッドキャプチャーを改善できる。Hyperliquidでは、フロントエンドがHYPEを多くステークすることで、コストを増やすことなくユーザー手数料を下げたり、テイクレートを上げたりできる。

大規模で永続的なネイティブ資産プールへのアクセスは、こうした事業の立ち上がりや規模拡大に役立つと同氏はコメントした。

プログラマブルマネー、生産性の高いバランスシート

ワトキンス氏は、これらの戦略を、主にプログラマブルではない資産を中心とした資本構成を重視するマイクロストラテジー(MicroStrategy)のビットコイン一本足の戦略と比較している。

同氏はさらに、それと比較して、スマートコントラクトプラットフォーム上のトークン(ETH、SOL、HYPE)はプログラマブルであり、オンチェーンで運用できると述べた。

DATが保有することで、手数料を支払ってステーキングを行い、流動性を供給し、貸付を行い、ガバナンスに参加し、バリデーター、RPCノード、インデクサーといった「エコシステム・プリミティブ」を獲得して、利回りを生み出すバランスシートへと転換することができる。

構造的に、同氏は成功しているDATを、よく知られたモデルのハイブリッド、すなわちクローズドエンド型ファンドやREITの永久資本、銀行のバランスシート重視の姿勢、そしてバークシャー・ハサウェイの複利運用の精神になぞらえた。

同氏によると、成功しているDATの特徴は、手数料ではなく1株あたりの暗号資産でリターンが計上される点だ。そのため、これらのビークルは、従来の資産運用会社よりも、基盤となるネットワーク上での純粋な運用に近いと言える。

同氏は、普通株、転換社債、優先株といったツールがDATにバランスシート拡大のための柔軟な資金調達手段を提供し、オンチェーン利回りがその資金を長期的に管理するのに役立つと主張する。

勝者、そしてリスク

ワトキンス氏は、「すべてのDATが成功するわけではない」と警告する。

同氏は、金融工学に重点を置きながらも運用実体が薄い第一世代の投資手段の多くは、状況が正常化するにつれて衰退していくと予想している。競争が激化するにつれ、統合、より特殊な資金調達の試み、そしてプレミアムがディスカウントに転じ、プレッシャーが高まると、時には無謀なバランスシートの変更が行われると予想している。

同氏の見解では、生き残るのは、規律ある資本配分と運用能力を組み合わせ、キャッシュフローをトークン蓄積、開発、そしてエコシステムの拡大に循環させる企業だ。「時が経つにつれ、最も優れた経営を行う企業は、ブロックチェーンにおけるバークシャー・ハサウェイのような企業へと進化する可能性がある」と記している。

|翻訳・編集:T.Minamoto
|画像:Shutterstock
|原文:Crypto Treasury Firms Could Become Long-Term Giants like Berkshire Hathaway, Analyst Says

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