NOT A HOTEL DAOが発行する暗号資産「NOT A HOTEL COIN(NAC)」が10月9日、IEO(Initial Exchange Offering)での公募価格である1000円台に値を戻した。
NACは、不動産Web3プロジェクト「NOT A HOTEL」に関連する独自トークンである。

国内過去最大となる20億円の資金調達を達成したIEOとして2024年12月13日にGMOコインで取引が開始され、当日に最高値3181円をつけるなど大きな注目を集めたが、その後価格は下落し、2025年2月には公募価格の1000円を下回っていた。
この価格回復は、特筆すべき意味合いを持つ。
現在、金融庁の金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ(WG)」では、暗号資産規制を金融商品取引法(金商法)の枠組みへ移行することが議論されている。
その中で、国内IEO案件の実績が大きな論点となっており、9月2日の第2回会合では、委員である京都大学の岩下直行教授(元日本銀行金融研究所)から、過去のIEO案件のほぼ全てが公募価格を大きく下回り、「壊滅的な実績」であると厳しく指摘された。

この問題提起は、続く9月29日の第3回会合における議論に直結し、金融庁からホワイトペーパーの法的文書化、すなわち虚偽記載に対する罰則や賠償責任を課すという規制整備案が提示されるに至った。
このように国内IEOへの厳しい目が向けられる状況下でNACが価格を回復した背景には、トークンの実需を創出しようとする動きがある。
このトークンは、「NOT A HOTEL」が提供する施設の宿泊費や食事代の支払いに利用できるほか、一定期間のレンディング(貸し出し)によって宿泊権を得ることも可能である。
さらに、6月には1万円相当以上のNAC保有者を対象に毎月抽選で宿泊権を提供する新サービス「THE DOOR」を開始するなど、トークン保有者に対する新たな需要喚起策も打ち出していた。
また、NOT A HOTELは10月9日、物件オーナーが所有する不動産をアプリから売却できる「セカンダリーマーケットプレイス」の開始を発表した。
|文:栃山直樹
|画像:GMOコインから(キャプチャ)


