金融庁は10月22日、金融審議会「第4回 暗号資産制度に関するワーキング・グループ」を開催した。
事務局からは、銀行による暗号資産の投資目的での取得・保有の解禁などを盛り込んだ制度改正案が提示されたが、委員からはその方向性に慎重な検討を求める意見も出された。
京都大学の岩下直行教授は、暗号資産が内包する構造的なリスクについて踏み込んだ見解を示した。
岩下委員は、暗号資産がマネーロンダリングやランサムウェアなど、実社会における「犯罪を支える基盤」として定着している現実を指摘。
規制された交換業者と匿名のオンチェーン取引は切り離すことができず、市場を完全にクリーンにすることは原理的に不可能であるとの認識を示した。
その上で、企業の成長支援を理念とする伝統的金融市場と、匿名性に基づく投機的側面の強い暗号資産市場では、その性格が根本的に異なると主張。両者の安易な統合は、伝統的金融システムに暗号資産特有のリスクを波及させる危険性があると警鐘を鳴らした。

同委員はさらに、膨大なコンプライアンスコストをかけてマネロン対策を行う銀行などが、暗号資産ビジネスに慎重な姿勢をとるのは当然であるとし、制度がその取り組みと矛盾する方向へ誘導することは不適切だと述べた。その上で、今後の「規制当局のさじ加減が非常に重要である」と指摘した。
一方、ジョージタウン大学研究教授の松尾真一郎氏は、技術的な観点から業界団体のセキュリティ管理体制に強い懸念を表明した。
松尾委員は、日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)が示した説明資料の技術的理解が不十分であると指摘。

その上で、事務局案が様々な情報提供を交換事業者やJVCEAが担うことを前提としている点に触れ、「セキュリティを含めてそのような能力を持ち、ガバナンス体制があるのか、その確信を得る証拠をまだ提出してもらっていない」と発言。「そのような状況では、事務局の全体の方向性の整理に今すぐ賛同できる状況ではない」と断じた。
|文:栃山直樹
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