- 1インチのレポートによると、ユニスワップやカーブなどの主要なDeFiプールの流動性の83%から95%が遊休状態にあり、手数料を稼いだりリターンを生み出したりしていない資産が数十億ドルあることが明らかになった。
- この非効率性が与える影響は個人の流動性プロバイダーに偏っている。50%がインパーマネント・ロスにより損失を被り、純損失は6000万ドルを超えている。
- 1インチは、プロトコル「アクア」による解決策を提案している。このプロトコルは、DeFiアプリケーションが共通の資本基盤を共有できるようにすることで流動性の利用を最適化し、断片化を軽減し、流動性プロバイダーのリターンを増加させることを目指している。
分散型取引所アグリゲーターである1インチ(1inch)の最新レポートによると、分散型金融(DeFi)における危機が深刻化している。主要なDeFi流動性プールに投入された資金の大部分が有効に活用されていないのだ。
ブエノスアイレスで開催されたデブコネクト(Devconnect)で提示されたデータによると、ユニスワップのV2・V3・V4、そしてカーブ(Curve)などの主要プールの流動性の83%から95%が、1年の大部分で遊休状態のままになっている。つまり、数十億ドルもの資金が、手数料を稼いだり、意味のあるリターンを生み出したりすることなく、スマートコントラクト内に滞留しているということだ。
レポートによると、ユニスワップV2単独でも実際に取引が行われている価格帯に含まれる流動性は通常わずか0.5%であり、約18億ドル(約2790億円)が有効活用されていない。
この非効率性は、個人投資家に最も大きな打撃を与える。レポートで引用されている調査によると、インパーマネント・ロス(DeFiに預けた資産が価格変動により損失を出すこと)を考慮すると流動性プロバイダーの50%が損失を被っており、その純損失は6000万ドル(約93億円)を超えている。注目すべき例として、ユニスワップV3のプール1つが、ジャストインタイムの流動性操作により3000万ドル(約47億円)以上の利益を失った。
この問題の一因は、エコシステム全体で700万を超える断片化された大量のプールの存在にある。この複雑さは流動性を希薄化するだけでなく、取引の効率的なルーティングを困難にして流動性プロバイダーのリターンをさらに減少させる。
新しいアプローチ
1インチにとっての解決策は、ユーザーのカストディ(保管)を犠牲にすることなくDeFiアプリケーションが複数の戦略にわたって同じ資本基盤を共有できるように設計されたプロトコルのアクア(Aqua)だ。
1インチの共同創設者であるセルゲイ・クンツ(Sergej Kunz)氏は、デブコネクトでのインタビューでCoinDeskに対し、「我々は新しいアプローチを導入することでこの問題に対処する」とし、「ウォレットに資産を保管するだけにできるようにする。仮想取引ポジションを作成できるようにする」と述べた。
クンツ氏にとって、現在の状況は「DeFi流動性危機」にあたる。
アクアは、この深い流動性を利用したい開発者にとって参入障壁を下げることも目指している。クンツ氏は「既存の分散型取引所(DEX)は今や、どれも10行のコードで実装できる」とした上で、流動性プロバイダーが複雑なプロトコル契約の中に資産をロックするのではなく「ウォレットに資産を保持」できるよう「上に構築するための基盤」を提供することが目標だと述べた。
|翻訳・編集:林理南
|画像:セルゲイ・クンツ氏(1インチ)
|原文:‘Liquidity Crisis’: $12B in DeFi Liquidity Sits Idle as 95% of Capital Goes Unused


