Securitize、EUでトークン化証券の取引・決済システム認可を取得 ― Avalanche採用で米欧市場接続へ【MCB FinTechカタログ通信】

2025年11月26日、現実資産(RWA)のトークン化プラットフォーム大手であるSecuritizeが、欧州連合(EU)におけるDLT取引・決済システム(DLT Trading & Settlement System:DLT TSS)の運営認可を取得したと発表しました。今回は、この発表の背景と、Avalancheが採用された理由、そして21XやtZEROといった競合他社との比較について詳しく見ていきます。

※本記事の内容は、マネックスクリプトバンクが週次で配信している、FinTech・Web3の注目トピックスを解説するニュースレター「MCB FinTechカタログ通信」の抜粋です。マネックスクリプトバンクが運営する資料請求サイト「MCB FinTechカタログ」にて、過去の注目ニュース解説記事を公開していますので、ぜひご覧ください。

DLTパイロット制度とAvalancheの採用

今回の認可は、EUがブロックチェーン技術の証券市場への適用を検証するために設けたDLTパイロット制度(DLT Pilot Regime)の下で付与されました。 今回承認されたDLT TSSは、株式や債券などの「取引(売買の成立)」と「決済(資産の受渡)」をブロックチェーン上で行うシステムを運用できる認可となっており、株式であれば時価総額5億ユーロ未満、債券であれば発行額10億ユーロ未満の金融商品を取り扱うことが可能になります。

承認されたDLT TSSのインフラ基盤には、「Avalanche」が採用されたことがSecuritizeのプレスリリースにて公表されています。Avalancheは、1秒未満で取引が確定する高速なファイナリティ(決済完了性)と、企業が独自のプライベートチェーン(サブネット)を構築できる機能を有しており、金融機関が求めるコンプライアンス要件と即時決済ニーズを両立できる点が評価された形です。

認可の詳細とロードマップ

Securitizeの欧州法人であるSecuritize Europe Brokerage & Marketsは、すでに2024年12月にスペイン証券取引委員会(CNMV)から「投資会社(Investment Firm)」としてのライセンスを取得しており、ドイツやフランスを含む主要EU加盟国・地域での活動が可能でした。今回の承認はさらに一歩進み、トークン化証券の取引・決済インフラそのものの運営を認めるものです。

DLT TSSを用いた最初のトークン化証券発行については、2026年初頭に予定されていることが公表されています。同社はすでにBlackRockと提携したトークン化ファンド「BUIDL」などで40億ドル以上の運用資産残高(AUM)を有しています。

BUIDLは当初Ethereum上で発行されましたが、現在はAvalancheやAptosを含む複数のチェーンに拡大しており、この実績と流動性を欧州市場へ持ち込むものとみられます。

米欧市場の接続と他社の動向

今回の認可における最大の特徴は、Securitizeが米国とEUという二大金融市場において、単独で正規のトークン化証券インフラを提供できるようになった点にあります。

競合他社の動向と比較すると、その優位性が見えてきます。同じEU圏内では、21XがSecuritizeに先駆けて2024年12月3日にDLT TSS認可を取得しています。さらに、AxiologyとLISEもDLT TSS認可を取得していますが、いずれも現時点で米国での認可インフラは保有していません。

また、米国のATS(代替的取引システム)認可を持つtZEROは、自社でEUにおける認可を取得するのではなく、英国の規制下にあるデジタル資産取引所Archaxと戦略的提携を結ぶアプローチをとっています。

このように、他社が地域特化や提携といったアプローチを採用する中で、Securitizeは自社で直接米欧市場に展開できるインフラを確立しました。これは、グローバルな流動性確保という点において大きなアドバンテージとなると考えられます。

考察

Securitizeの動きは、ブロックチェーンを用いた金融商品のトークン化の動きが、特定の国・地域だけでなく、グローバルな展開へと移行し始めたことを示唆しています。特に、規制に準拠した形で米国と欧州の流動性が接続されることで、機関投資家がトークン化証券へ参入する際のリスクは低減されると考えられます。

今後、日本においても同様の相互運用可能な規制枠組みが整備されるか、また21XやtZEROなど特定の国・地域での認可を取得している企業がSecuritizeと同じく他の地域への拡大を進めていくのか、今後の動向にも注目したいところです。

|文:宮本航歩
|編集:CoinDesk JAPAN編集部
|トップ画像:Securitizeのウェブページ(キャプチャ)

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