野村HDら4社、国内初「J-Ships」活用のVCファンド型セキュリティ・トークン発行手続きを完了

野村ホールディングス、野村アセットマネジメント、野村信託銀行、およびBOOSTRYの4社は12月2日、国内独立系ベンチャーキャピタル(VC)であるB Dash Venturesが運用するVCファンドを出資対象とするセキュリティ・トークン(デジタル証券)の発行手続きを完了したと発表した。発行総額は約80億円に上るという。

本件の最大の特徴は、証券会社を通じて非上場企業の株式や投資信託などを「特定投資家(プロ投資家や一定の資産を持つ個人)」向けに柔軟に流通させる「特定投資家向け銘柄制度(J-Ships)」を活用している点だ。

J-Shipsを活用したセキュリティ・トークンの発行、およびVCファンドを対象としたセキュリティ・トークンの発行は、いずれも国内初の事例とされる。

今回のスキームでは、BOOSTRYが開発を主導するコンソーシアム型ブロックチェーン「ibet for Fin」が採用された。

従来、投資事業有限責任組合を用いたVC投資は契約や管理の実務が複雑であり、これが個人を含む投資家にとっての参入障壁となっていたという。

今回、ブロックチェーン技術を用いて持分の管理や権利移転を電子化・自動化することで、事務負担を大幅に軽減し、特定投資家への新たな投資機会の提供を実現したとしている。

BOOSTRYが同日に公開した解説記事によると、本件のような「プライベート・アセット(オルタナティブ資産)」への投資は、世界的に拡大傾向にあるという。

同記事では、世界最大の機関投資家である日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、2025年3月末時点で4兆円以上をオルタナティブ資産で運用しているデータ(下図)を示し、上場株式や債券とは異なるリスク・リターン特性を持つ同資産が、ポートフォリオの効率性向上に寄与すると指摘している。

一方で、こうした資産は流動性が低く、従来は機関投資家によるアクセスが中心であった。

BOOSTRYは、2022年7月に施行されたJ-Ships制度について、成長資金を求める企業とリスク許容度の高い投資家をつなぐ仕組みであると解説。

厳格な基準を満たした「特定投資家」に対して行為規制の一部を免除することで、自由度の高い投資が可能になるとしている。

|文:栃山直樹
|画像:Shutterstock
※記事を更新しました。12月3日18時22分

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