【イーサリアム価格分析】「Fusaka(フサカ)」アップグレード後にバリデーター数が約7000減少、だが価格には強気材料か
  • 12月3日に実施されたアップグレード「Fusaka(フサカ)」はスループットを改善したが、バグにより、12月24日までにバリデーター数は約6697減少した。
  • だが、ステーキングされたETH総量は12月10日の3482万ETHから12月23日には3552万ETHへと回復し、利回りも2.72%から2.75%に上昇した。
  • ETH価格は12月10日の3477ドルから約15%下落しており、12月23日時点で8300万ドルのETF流出や新たな清算圧力の影響を受けている。

12月3日に実施されたイーサリアムブロックチェーンのアップグレード「Fusaka(フサカ)」は、処理能力とトランザクション性能を引き上げた。しかし、ステーキング基盤への余波は、イーサリアム(ETH)が3000ドル回復を試みる局面と衝突している。

イーサリアムは、心理的節目の3000ドルを上回る水準を維持できていない。12月10日に月間高値となる3477ドルを付けた後、現在までに約15%下落。週明けには新たな清算が発生し、一時3100ドルを回復したものの、再びデリバティブ市場では下落局面で、日中に6400万ドル相当のポジションが清算された(Coinglassのデータによる)。

Prysmのバグでバリデーター数減少

「フサカ」は12月3日に実装され、Peer Data Availability Sampling(PeerDAS)が導入された。実装後、開発者はコンセンサスクライアント「Prysm(v7.0.0)」での重大な不具合を検知した。

この不具合により、ノードがアテステーションを処理する際に、古いステートを生成する問題が発生した。すなわち、多くのバリデーターがチェーンとの同期を維持できなくなった。12月5日のForklogの記事によると、バリデーターの活動は約25%急減した。

ノード運営者がパッチ適用のためにノードを停止したり、同期障害に見舞われたりしたことで、数千のバリデーターがオフラインに追い込まれた。その結果、アクティブ・バリデーター数は打撃を受け、一部のノードは不正確な動作がルール違反と判断され、ステーキングしているイーサリアムの一部を没収される「スラッシュ」を受け、また別のノードは復旧作業のために運用を停止し、そのまま自発的にネットワークから退出した。

ValidatorQueueのリアルタイムデータによると、イーサリアムのアクティブ・バリデーター数は12月8日の99万8849から、12月24日には99万2152へと減少した。フサカ後の約20日間で6697のバリデーターが減少しており、Prysmの不具合後にステーキング環境で生じた高い離脱率と一致している。

21億ドル相当の新規流入が示すバリデーター統合

フサカ後のバリデーター数減少は、一見するとイーサリアムにとって弱気材料に映る。しかし、ステーキングされたイーサリアムの総量にはネガティブな影響はない。

2025年5月のアップグレード「Pectra(ペクトラ)」と12月の「フサカ」によって、バリデーターの大規模な統合が可能となった。大口の機関投資家は、多数の小規模バリデーターを、より少数の大規模バリデーターに統合できるようになった。

つまり、従来、バリデーターのイーサリアム保有量は32ETHに上限が設定されていたため、数千ETHをステーキングするには多数の独立したバリデーターを運用する必要があった。この上限(Max Effective Balance:MaxEB)が2048ETHに引き上げられ、大規模なバリデーターを運用できるようになったことで、ハードウェア負荷や運用の複雑性が低減された。

Lido(ライド)、Coinbase(コインベース)、Kraken(クラーケン)といった大手ステーキングプロバイダーは、32ETH単位の小規模バリデーターを、より少数の「スーパーバリデーター」に統合しており、ネットワークの安全性を損なうことなく、アクティブ・バリデーター数の減少を加速させている。

〈フサカ後の12月8日〜23日にかけてステーキング量は70万ETH増加した|ValidatorQueue〉

オンチェーンデータも、これを裏付けている。フサカ後、ステーキングされたイーサリアム総量は一時的に急減し、12月10日に約3480万ETHで底を打った。しかし、バリデーター数が約7000減ったにもかかわらず、12月23日には約3550万ETHまで回復し、供給量に占めるステーク比率は28.7%から29.3%へと上昇した。

これは、純増で約70万ETH、現在のイーサリアム価格で21億ドル超に相当する新規流入があったことを意味する。フサカはステーキング・インセンティブも押し上げた。報酬を分け合うバリデーター数が減少したことで、ステーキング利回りは12月8日の2.72%から、執筆時点では2.75%へと上昇している。

イーサリアム価格見通し:ETF流出が重し、トレーダーは2900ドルを防衛

ステーキング残高と利回りが改善しているにもかかわらず、イーサリアムの価格動向はマクロリスクや競合チェーンとの比較によって引き続き制約を受けている。StakingRewardsによると、Solana(ソラナ)の現在のステーキング報酬は約6%で、イーサリアムの2.75%を大きく上回る。

〈バリデータ数が約7000減少する一方、ソラナETFには7億5300万ドルが流入|FarsideInvestors〉

2025年の見通しレポートで、マーカス・ティーレン(Markus Thielen)氏率いる10x Researchは、こうした資金ローテーションがイーサリアム価格の重しになる可能性を指摘した。同レポートは、アクティブ・バリデーター数が月次で約1%減少していることや、イーサリアムのステーキング利回りがビットコインのパフォーマンスや他の利回りと比べて見劣りする点をあげている。

2025年も終わりが近づくなか、イーサリアムのトレーダーは、直近の下値レジスタンスである2900ドルを注視している。この水準は、最近の下落局面で何度も反発につながった「買いゾーン」として機能してきた。2900ドルを明確に割り込めば、新たな清算の連鎖を招き、2700ドル近辺の下位サポートが再び意識される可能性が高い。

一方で、フサカ後にステーキングされたイーサリアム総量が増加している点は、ネットワークの安定性と、最近の技術的アップグレードに対する大口参加者の信認を示している。強気派がトレンド反転を確認するためには、3000ドルを上回る水準での数週間にわたる終値が必要になる。

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