ステーブルコイン決済、導入初週で70カ国が利用──ストライプの責任者が語る急成長の裏側

ステーブルコインは「速い・安い・グローバル・プログラマブル」という特性で世界中に急速に広がっている──。

米決済大手Stripe(ストライプ)が昨年10月に買収して傘下に収めたステーブルコイン決済プラットフォームBridge(ブリッジ)のプロダクト統括責任者マイ・ルデュック氏は9月3日、ストライプが都内で開催したイベントに登壇。ストライプがステーブルコイン決済を導入した際、最初の1週間で70カ国からの取引が殺到し、現在は120カ国に広がっていると述べた。

送金企業のRemitlyやECプラットフォームのShopifyなど、大手企業も次々にステーブルコイン決済を導入し、国境を越えた金融サービスの需要が爆発的に拡大しているという。

ルデュック氏は、ステーブルコイン市場が前年比49%拡大し、ブラジルでは暗号資産取引の90%以上を占め、トルコではGDPの4%超に達していることに触れ、企業が直面している「クロスボーダー送金」「現地通貨での支払い」「トレジャリー業務の非効率さ」といった課題がステーブルコインで解決可能になっていると述べた。

数カ月でグローバル展開

ブリッジの具体的なユースケースも紹介した。送金企業Remitlyはブリッジを活用してUSDCによる国際送金サービスを開始。グローバル規模の人材・採用プラットフォームRemoteも68カ国で契約者(雇用者)へのUSDC支払いを導入し、利用企業数は月ごとに倍増していると述べた。

ストライプ自体も5月、100カ国以上に対応するステーブルコインを活用した資金管理機能「Stablecoin Financial Accounts(ステーブルコイン金融口座)」を発表している。

〈ブリッジのプロダクト統括責任者、マイ・ルデュック氏〉

講演後に開催されたプレス向けのブリーフィングでルデュック氏は「ストライプが50カ国に展開するまでには15年かかった」としたうえで、今年2月にブリッジ買収を完了した後、5月には上記のステーブルコイン金融口座を発表することができたと述べ、同様に企業は「ストライプを使えば、数カ月で決済や資金移動をグローバルに拡張できる」と強調した。

AIデータラベラーへのマイクロペイメント

また、ブリーフィングではAIエージェント型のEコマースとステーブルコインの関係にも言及。AIエージェントが普及して、多数のマイクロトランザクションが発生するようになれば、「ステーブルコインは、マイクロトランザクションのための効果的なツールとなる」と語った。

実際、その一例として生成AI向けデータ整備で知られるScale AIの事例を紹介。Scale AIは、主に新興国のデータラベラーに1件あたり数セントの報酬を支払っている。

こうしたクロスボーダー、かつ少額の決済を従来の国際送金手段で行うことは非効率だが、ルデュック氏は「Scale AIは(ステーブルコインを使って)世界中のデータラベラーに対してマイクロペイメントを行っている」と説明した。

ストライプは東京でのイベント翌日の9月4日、ステーブルコイン決済のための独自ブロックチェーン「Tempo」を発表。決済大手として、従来の決済手段を揺るがす可能性のあるステーブルコインへの対応を積極的に進めている。ステーブルコインをめぐる競争は、ますます加速していきそうだ。

|文・撮影:増田隆幸

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