- 小口セグメントにおけるステーブルコイン取引は2025年に記録的な水準に達し、8月時点ですでに昨年の総取引量を上回っていると、CEX.ioのレポートは指摘。
- 新興市場のユーザーは、高額な銀行手数料と送金スピードの遅さを避けるため、ステーブルコインの利用を増加させていることが調査で明らかになった。
- バイナンス・スマート・チェーンが小口取引の約40%を占める一方、トロンは市場シェアを失った。
個人ユーザーによるステーブルコインの導入は今年、新たな記録を樹立し、8月までの取引量はすでに昨年の総取引量を上回っていると、CEX.ioの最新レポートが述べた。
レポートで引用されているビザ(Visa)とアリウム(Allium)のデータによると、250ドル未満の取引を計上する小口規模の送金は、8月だけで58億4000万ドル(約8600億円、1ドル148円換算)を超え、過去最高を記録。2025年が残り約4カ月となる中、今年はすでに、消費者レベルでのステーブルコインの送金が最も活発な年となっている。
これらの数字は、米ドルなどの法定通貨に連動する暗号資産群であるステーブルコインが、国際送金からマイクロトランザクションに至るまで、日常の金融活動にますます組み込まれつつあることを強調していると、レポートは指摘している。
CEX.ioのアナリストによると、ナイジェリア、インド、バングラデシュ、パキスタン、インドネシアの2600人を超える消費者を対象とした新興市場のデータが、この状況を裏付けている。回答者の大部分は、高額な銀行手数料と送金スピードの遅さを避けるためにステーブルコインを利用するようになったと回答したと、レポートは指摘。回答者の約70%が、昨年より頻繁にステーブルコインを使用していると報告し、4分の3超が利用が増えると予想していると、レポートは述べた。

イーサリアムは拡大、トロンは後退
ブロックチェーン間の活動分布が変化していると、レポートは指摘。これまで、手数料の低さとテザー(Tether)社のテザー(USDT)への広範なサポートにより小口送金で人気があったトロン(Tron)ブロックチェーンは、市場シェアを失った。月間取引件数は130万件、6%減少し、取引量の伸びは最大の競合に後れを取った。
その代わりに、バイナンス・スマート・チェーン(BSC)が個人ユーザーの最有力選択肢として浮上し、ステーブルコインの小口取引の約40%を占めていると、レポートは述べた。同ネットワークの取引件数は今年75%急増し、送金額は67%増加。この勢いは、バイナンス(Binance)が3月に欧州ユーザー向けにUSDTを上場廃止したことと、BSC上のパンケーキスワップ(PancakeSwap)でミームコイン取引が再燃したことに大きく起因している。
ベースチェーンとレイヤー2ネットワークを合わせたイーサリアム(Ethereum)複合体は、送金量の20%超、取引件数の31%を占めているとレポートは指摘。小口送金は主にレイヤー2で行われたものの、メインネットでは小口セグメントで大幅な増加が見られた。メインネットにおける250ドル未満の送金は、取引量が81%、取引件数が184%増加した。
イーサリアムは手数料が高いため、主に大口取引に利用されてきたが、過去1年間で取引コストが70%超の低下となったため、250ドル未満であってもメインネット取引がより競争力を持つようになったと、レポートの著者らは述べた。
|翻訳・編集:廣瀬優香
|画像:250ドル未満のステーブルコイン送金(Visa/Allium)
|原文:Stablecoin Retail Transfers Break Records in 2025, Hit $5.8B in August


