サンフランシスコを拠点とするAI企業Sentient Labsは12月11日、Web3と暗号資産(仮想通貨)のリサーチに特化したAIエージェント「SERA-Crypto」を発表した。
GPT-5やGemini、Grok 4といった汎用的な大規模言語モデル(LLM)が苦手とする正確でリアルタイムな金融データの提供を目的に開発されたもので、AIが事実とは異なる情報を出力してしまう「ハルシネーション(幻覚)問題」の克服を目指すとしている。
SERA-Cryptoは取引所やウォレット、リサーチチームなどによる利用を想定して設計された。急速に変化するオンチェーンデータやトケノミクス(トークン経済)の分析、プロトコルのリスク評価などを30秒以内に提示。すべての回答には引用元と推論プロセスが明示されるため、トレーダーやリサーチャーが情報の裏付けを即座に検証できる点を特徴としている。
例えば、ソラナ(SOL)エコシステムの収益推移を尋ねた場合は、収益額やピーク時期、成長率に加え、プロトコル別の日次データや将来見通しまで含めた構造的な分析を提示できるという。
既存のAIモデルとの比較では、GPT-5は高精度ながら大まかな数値しか出せず、Perplexity Financeは引用元は豊富だが分析の深さに欠けると指摘。SERA-Cryptoは、24〜48時間以内の最新データに基づき、プロトコルレベルの深い分析を行えるとしている。
学習データの“鮮度”が命取りに
同社共同創業者でインド科学研究所教授のヒマンシュ・チャギ(Himanshu Tyagi)氏はリリースで、暗号資産の分野ではAIの誤答が「極めて高くつく」と指摘。トークンのアンロックスケジュールのような基礎情報であっても、AIがでっち上げた回答を提示すれば、そのままユーザーの損失につながりかねないと強調している。

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さらにリリースには、汎用モデルが抱える問題点としてデータ鮮度の遅れも指摘されている。AIの参照データが1週間以上前の情報に基づくことも珍しくないとし、ボラティリティの高い暗号資産市場では致命的なタイムラグになり得ると説明している。
SERA-Cryptoは、市場データAPIやTVL(預かり資産)トラッカー、デリバティブ市場データなど50以上のツールと連携。これらのデータを並列処理することで、クローズドソース型の競合よりも低コストで高速なレスポンスを実現したとしている。
今回発表された「SERA-Crypto」は、同社が開発する新しいアーキテクチャ「SERA(Semantic Embedding and Reasoning Agent)」を採用。すでに、Sentient Chatを通して利用可能だが、順次オープンソースとして公開される予定だという。
|文:橋本祐樹
|画像:Sentientが発表したAIエージェント「SERA-Crypto」(キャプチャ)


