国税庁は12月11日、令和6事務年度(2024年7月~2025年6月)における所得税および消費税調査等の状況を公表した。
重点項目の一つである暗号資産(仮想通貨)取引に関しては、調査件数および追徴税額ともに前年度を上回る結果となった。
同庁の公表資料では、調査区分についての具体的な定義も示されている。それによると「実地調査」とは、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に行われる深度ある調査を指す。
とりわけ「特別調査」については、多額の申告漏れが見込まれる個人を対象として、1件当たり10日以上を目安とする相当の日数を確保して実施されるものと説明されている。

当該事務年度において、暗号資産取引を行う個人に対して実施された実地調査(特別調査・一般調査)は613件であり、前事務年度の535件から14.6%増加した。
これらの調査によって把握された申告漏れ所得金額の総額は156億円、加算税を含む追徴税額の総額は46億円に達した。
特に追徴税額の総額は前年度の35億円に対し、対前年比131.4%の大幅な増加を記録している。
1事案あたりの追徴税額が高額である傾向も続いている。今回の調査における1件当たりの平均追徴税額は745万円となり、前年度の662万円から上昇した。
この数値は、所得税の実地調査全体における平均額299万円と比較して約2.5倍の水準にあり、暗号資産関連の事案では高額な修正申告に至るケースが多いことが示された。
なお、1件当たりの申告漏れ所得金額は平均2538万円であった。
一方、暗号資産税制を巡っては大きな転換点を迎えつつある。
政府は、暗号資産取引による所得への課税方式について、現行の最大55%となる総合課税から、一律20%の申告分離課税へ移行する方向で調整を進めており、2025年末にまとめる税制改正大綱への反映が見込まれている。
|文:栃山直樹
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