【独自】暗号資産ETF、2028年解禁へ──税制改正と同時施行で調整

暗号資産(仮想通貨)税制の「申告分離課税」への移行が2028年1月までずれ込む見通しとなったことを受け、暗号資産ETF(上場投資信託)の国内解禁についても、同時期まで先送りされる公算が高まっていることが18日、業界関係者への取材で明らかになった。

金融庁の動向に詳しい業界関係者は、当局とのやり取りを明かし、「(担当者は)税制改正と同時期のETF解禁を考えている、と言っていた」と語った。

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同関係者はその理由について、「仮に法改正(金商法改正)と同時にETFだけが先行して解禁されれば、ETFは他の金融商品と同じ20%の税率が適用されることになる。その一方で、現物取引だけが雑所得・総合課税のまま取り残される。これが最悪のシナリオだ」と指摘した。

そもそも、最大55%に達する現行の税負担を回避できる「税率20%の暗号資産商品」として、ETF解禁は投資家から強く待望されてきた背景がある。

同関係者は、もしETFのみが先に解禁されれば、こうした税制メリットを求める資金が一方的にETFへ流れ、現物取引を行う意義が失われてしまう事態を危惧した形だ。

さらに当局は、国内で組成されるETFと、米国などの海外で組成されるETFを「同時解禁する」方針であるという。

米国では2024年1月のビットコインETF承認以降、最大手ブラックロックの関連商品だけで割り当て額は1000億ドル(約15.5兆円)規模に迫り、ビットコイン総供給量の3%以上を保有するまでに急拡大している。

国内の体制が整わないまま海外ETFのみが先行して購入可能となれば、日本の投資家の資金がこうした巨大な米国市場へ一気に流出し、実質的な円売り圧力となることは避けられない。海外資産に対して、日本当局による投資家保護が及ばないという課題も残る。

一方、国内事業者もすでに準備を進めている。SBIホールディングスは、7月の決算説明会で「SBI・ビットコイン/XRP ETF」という具体的な商品案を公表。「当局の認可が得られ次第、組成」する方針を打ち出した。国内勢は、解禁の号砲が鳴れば即座に商品を提供できる体制を整え、市場開放の時を待っている。

当局が「内外同時解禁」の方針を重視していることは、直近の事例からも見て取れる。

金融庁は今年10月末、海外の暗号資産ETFを原資産とするデリバティブ商品の国内提供について「望ましくない」との見解を示した。これを受け、IG証券は11月、前述のブラックロックなどのETFを参照するCFD(差金決済取引)の取扱い終了を余儀なくされている。

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基本路線は「税制とのセット解禁」で固まりつつある。ただ、取材に応じた同関係者によると、ある政界関係者は「ETF解禁が(税制改正に)先行する可能性もゼロではない」と漏らしていたという。

情勢は流動的な側面を残すが、投資家保護と市場の公平性を最優先する現状の方針からすれば、新税制への移行が見込まれる2028年1月での解禁となる可能性が高い。

|画像:Shutterstock

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