ステーブルコインに影響を与える南北戦争の遺産

ステーブルコインに影響を与える南北戦争の遺産

1861年、アメリカでは南北戦争が勃発した。そこから4年間にわたる戦いの中、アメリカの政治は作り変えられ、通貨システムも新しくなった。その時生まれた通貨システムは現在も存在し、ステーブルコインの未来を形作っていると言えるだろう。

分散型通貨システム

南北戦争前には、多種多様な硬貨や紙幣が乱立する分散型通貨システムが存在していた。紙幣はすべて、独立した各銀行が発行していた。(米政府発行の紙幣は存在しなかったのだ)銀行が通貨を発行したい場合には、州の銀行当局に債券を預け入れる必要があった。銀行は通常、預け入れた債券の価値の90〜100%の価値を持つ通貨を発行することができた。

しかし、一部の州では、担保として価値のない債券を預け入れることも可能だった。そのようなルールを無視する銀行もあった。結果として、様々な価値を持つ、何千もの異なる紙幣が存在していた。

さらに事態を悪化させていたのは「ヤマネコ銀行」の存在だ。ヤマネコ銀行は、ある地域に出現し、紙幣を幅広くばら撒く一時的な事業を展開。突如姿を消し、後には価値のない紙幣が残された。

南北戦争中には、議会とリンカーン政権がこのような分散型システムをくつがえし、通貨に関して政府の独占的支配を打ち立てた。独占は多くの方法で確立されたが、ステーブルコインの未来に最も関連性があるのは、通貨の再定義と国立銀行システムの樹立を通したものだ。

通貨独占の樹立

南北戦争以前には、お金は「流通通貨」あるいは「合法通貨」であった。流通通貨とは、幅広く使われていた公営あるいは民間の通貨。合法通貨とは、公式のお金であった。南北戦争が始まると議会は、流通通貨と合法通貨を統合し始めた。

例えば1862年の法律では、「通貨として流通させることを意図して、(中略)あるいは合法通貨の代わりに使われる、1ドル未満の価値を持つ」証券を発行することはできないとされた。一方、1864年に議会は、「『流通通貨』という目的で使われることを意図した(中略)いかなるコインも(中略)発行したり、手渡してはならない」と宣言した。つまり、自由に流通し、支払いに使うことのできる唯一の通貨は、アメリカ公式の通貨だけということだ。

このような通貨の再定義と組み合わされたのは、民間銀行券の制限だ。これまでに見てきた通り、19世紀初頭には、民間銀行が何千もの銀行券を発行していた。このような混沌を終わらせ、アメリカの通貨システムを統合するために、1863年、国立銀行システムが通貨監督庁(OCC)のもとに生み出された。

こうして生まれた新しい国立銀行は、国立銀行券と呼ばれる独自の銀行券を発行することができるようになった。

OCCは実質的に、民間通貨システムを再構築し、厳格な預け入れ(発行に対して100%の準備金)と監査基準を満たし、政府が認可する銀行券を発行する国立銀行の、政府が管理する集まりにしたのだ。議会は税金をかけることで、民間銀行券の存在を完全に終わらせた。国立銀行による銀行券は最終的に、FRB(連邦準備制度理事会)による銀行券に取って代わられた。

南北戦争とステーブルコイン

南北戦争が残した通貨における遺産は、現在のステーブルコインにどのような影響を与えているのだろうか?最近の展開をいくつか見てみよう。

ヤマネコ銀行と、銀行が無価値の通貨を発行し、利益を持ち逃げする懸念について話したのを覚えているだろうか?ステーブル法と呼ばれる、ステーブルコイン分類・規制法(Stablecoin Classification and Regulation Act)は、まさにこのような懸念に対処するものだが、この場合の対象はステーブルコインだ。

2020年11月に下院に提出されたこの法案は、ステーブルコインを発行するいかなる組織も、連邦準備制度の一部となり、発行するコインに対して100%の準備金を保持することを求めるものだった。そのような連邦法は「ヤマネコ」を防ぐと期待されていた。ヤマネコ銀行ではなく、ヤマネコステーブルコイン発行業者の登場をだ。

しかし、ステーブル法は矛盾に基づいている。ステーブルコインを民間の流通通貨と定義して、その発行を認可しているのだ。これまでに見てきた通り、流通通貨は法律的には合法通貨と同じものであり、正式なアメリカのお金だ。

このような認可を受けるステーブルコインは、南北戦争中に確立されたアメリカにおける通貨独占に楯突くもので、前述の1862年(分割されたステーブルコインがない限り)と1864年の法律に明らかに違反する。

ステーブルコインは違法か?

では、ステーブルコインは違法なのだろうか?ステーブルコインは、小売業での支払いで米ドルと直接競合しようとすると、法律上の問題に直面する。日常的な支払い手段としてドルに取って代わろうするステーブルコインは、流通通貨として認識され、(ステーブルコインは実際にはコインでもトークンでもないと主張しない限り)民間コインを禁じる1864年の法律に違反する。

ステーブルコインは、スクリップと呼ばれる通貨代替物により似ている。スクリップとは、閉じられた、あるいは地理的に限定されたシステム内でのみ機能し、米ドルとは直接置き換えられない、ドル建てではない民間通貨のことである。

つまり、スクリップは通貨に対する米政府の独占を脅かさない。アメリカで現在唯一合法な民間通貨はこの分類に該当する。ステーブルコインが閉じられた民間ネットワーク内でのみ使われるのであれば、法律上の問題はないはずなのだ。

これは、OCCが2021年1月の書簡で採用した解釈である。OCCはステーブルコインを流通通貨ではなく、支払いの仕組みと定義した。「ステーブルコインは、INVN(独立ノード検証ネットワーク)上で法定通貨を表す手段として機能する。こうして、ステーブルコインは法定通貨がINVN上での支払い経路にアクセスする手段を提供する。ステーブルコインはスクリップであるということを、高尚に表現したものなのだ。

しかし、もう1つの書簡も見てみよう。OCCは2020年9月21日、ステーブルコイン発行者のために、ステーブルコイン準備金の保管を国内の銀行に許可する声明を発表した。このルールによって、100%裏づけとなる準備金を保持していれば、国内の銀行がステーブルコインの発行をサポートすることができるようになる。

国立銀行システムを基盤とした、ステーブルコイン発行者の全国規模のネットワークを思い描くことができるようになったのだ。ステーブルコインが、南北戦争時代の国立銀行券に取って代わることができるのだ。

南北戦争によって、分散型通貨システムは中央集権型のものに取って代わられ、その過程では、現在まで存続する新たな通貨の定義と構造が確立された。南北戦争時代の遺産が、ステーブルコインや暗号資産全般の発展をかたちづくっているのだ。

フランクリン・ノール(Franklin Noll)博士は、紙幣や暗号資産を含めた通貨の歴史に関して権威ある存在と認められている。これらのトピックについて幅広く執筆、講演活動を行っており、ノール・ヒストリカル・コンサルティング(Noll Historical Consulting)の社長も務める。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:How the Civil War Shapes the Future of Stablecoins

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