DeFiはスコップ──タイ銀VCが見据える未来

タイ大手銀、サイアム商業銀行傘下のベンチャーキャピタル「SCB 10X」は、DeFi(分散型金融)が従来の銀行業務を覆すかもしれない日に備えている。

同社チーフベンチャー・投資責任者のムカヤ・タイ・パニク(Mukaya Tai Panich)氏は、DeFiは現在の伝統的金融が持つすべてを備えていると10日、米CoinDeskに語った。

「DeFiを考えたとき、いつの日か銀行や他の金融機関を完全にディスインターメディエイト(中抜き)する可能性があると感じた」(パニク氏)

与信/融資、資産運用、保険、トレーディング、デリバティブ、プライムブローカレッジなどが中抜きされると同氏は指摘した。

仲介者を排除

経済学では「ディスインターメディエーション」は、サプライチェーンから仲介者を排除することを言う。DeFiは仲介者としての金融機関を排除できる能力を持つと言われている。

パニク氏は、銀行がそうした事態に備える方法は、DeFiに「きわめて積極的に」投資し、学ぶことと述べた。また同社はDeFiを伝統的な金融に組み込むだけでなく、適切なパートナーを探している。

「我々はDeFiプロジェクトと提携して、運用コストの削減、リアルタイム決済、仲介者の排除、高い透明性など、従来の金融の課題解決にともに取り組みたいと考えている」(パニク氏)

同氏は伝統的な金融企業が分散型の金融企業と連携する未来を信じていると述べ、伝統的金融企業の「巨大な顧客基盤」の存在を指摘した。

このシナリオでは、伝統的金融企業は、顧客獲得や「シンプルでわかりやすく、統合されたインターフェイス」の提供など、対顧客の活動を担当する。一方、DeFi企業は、取引時間や決済時間の短縮、コスト削減、透明性向上のためにバックエンドを強化する。

「我々のような伝統的金融企業は積極的にDeFiを検討し、投資し、採用すべきだと思う。同時にDeFi企業は、自社の強みを生かすために伝統的金融企業との連携を考えるべきだ」(パニク氏)

相互運用性

パニク氏は、同社はこの分野でどのようなトレンドに注目しているかという質問に対して、インフラの継続的な発展と既存プロトコル間のチェーンを超えた相互運用性に期待していると語った。

同氏によると、異なるプロトコル間での相互運用性が実現すれば、さまざまなブロックチェーン間で資産や情報をより効率的に利用できるようになるという。

同社は2月に5000万ドルのファンドを組成し、次世代の金融サービスを切り開くと同社が評価した、世界の成長段階にある企業に焦点をあて、ブロックチェーン、デジタルアセット、DeFiスタートアップに投資している。

「つるはしやスコップに投資することは昔から良いアイデア。DeFiはこの1年、まさに急速にイノベーションを続けている。今ではこうしたイノベーションに追いつくためにインフラのアップデートが求められている」とパニク氏は述べた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:タイの首都バンコク(Shutterstock)
|原文:Venture Arm of Thailand’s Oldest Bank Says DeFi Will Disrupt Traditional Finance