ECB、デジタルユーロのプロトタイプを最終決定

5月26日に発表されたレポートによると、欧州中央銀行(ECB)は、EUの法定通貨を新しい形式で開発するかどうかを今年後半に決定する準備として、デジタルユーロのプロトタイプを完成させたという。

ECBは、中央銀行デジタル通貨(CBDC)はイノベーションを促進するように設計できると述べているが、Web3スタイルの分散型台帳技術やスマートコントラクトの使用については懐疑的だ。

ECBのファビオ・パネッタ(Fabio Panetta)専務理事は、欧州議会のアイリーン・ティナグリ(Irene Tinagli)議員に宛てた書簡の中で「今回のプロトタイプは、革新的な機能や技術の余地を十分に残しつつ、デジタルユーロ設計の選択肢を既存の決済環境にスムーズに統合できることを示している」と述べ、その知見は「デジタルユーロの機能的設計と技術的設計の両方へのインプットとして役立つだろう」と付け加えた。

デジタルユーロは、フェイスブック(Facebook)の独自通貨「リブラ(Libra)」(その後「ディエム(Diem)」に改名され、廃止された)への回答として浮上した時期もあったが、ECBのプロトタイプには、アメリカの巨大テック企業であるアマゾンが関与しており、論争にさらされてきた。

EUの議員たちが計画の変更を求める中、パネッタ専務理事はアマゾンの長期的な関与の重要性を軽視し、プロトタイプは「実験室での実験」であり、「廃棄され、これ以上使われることはない」と述べたようだ。

プロトタイプの設計

中央銀行が独自に開発したプロトタイプのバックエンドについて、ECBは分散型台帳技術を否定したが、暗号資産取引でも使用されるUTXO(未使用トランザクションアウトプット)に基づく集中型モデルを支持した。

UTXOシステムは「取引の迅速かつ効率的な検証を可能にし、プライバシーを保護しながらさまざまな支払いタイプをサポートする」とECBの報告書は述べ、スマートコントラクト(分散型金融で人気の自動化ソフトウェアの一種)を使用せずに条件付き支払いを行うことも可能だと付け加えている。

欧州委員会は、デジタルユーロのプライバシー保護策やその他の主要な問題を網羅した法案を6月に発表する予定だ。しかし、議員たちは、ユーザーがその後の資金の使い方をコントロールできるプログラマブル・マネーのようなイノベーションを認めないのであれば、CBDCの利点について懐疑的であることを表明している。

EUは、現在CBDCを検討している世界中の多くの国・地域の一つであり、その中にはお隣のイングランド銀行も含まれている。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:井上俊彦
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|原文:ECB Finalizes Digital Euro Prototypes as Development Decision Looms