IEO後に「タイミング良くグローバル展開」:ハッシュパレット 吉田氏

NFT流通に特化したブロックチェーン開発などを手がけるハッシュパレット(HashPalette)は2月9日、国内5例目、日本初のゲームトークンのIEOとなる「エルフトークン(ELF Token)」のIEO説明会を暗号資産(仮想通貨)取引所bitFlyerで開催した。

IEO(Initial Exchange Offering)とは、暗号資産を使った資金調達手法で、企業、プロジェクトなどの発行体が新たに発行する暗号資産を暗号資産取引所が審査し、事業の継続性、運営の安全性などを確認したうえで、その販売・流通を支援するもの。今回のIEOは、bitFlyerが手がけるIEOプラットフォーム「bitFlyer IEO」の初案件となる。

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説明会では、ハッシュパレット取締役会長兼創業者の吉田世博氏がまずIEOとエルフトークンが使用できるNFTファーミングゲーム「THE LAND エルフの森」の概要を説明。「日本で初めてのゲームトークンのIEO。諸外国においては多くゲームトークンが流通し、ひとつのカテゴリーを形成する規模になっているが、ゲーム大国の日本ではまだまだこうしたジャンルの作品はない」と切り出した。

「THE LAND エルフの森」は、いわゆる「農場ゲーム」と呼ばれるもので、プレイヤーは農作物を栽培・収穫し、他のプレイヤーに販売するなどさまざまな交流を行っていく。Web3ゲームを作るうえでは、ブラウザゲームの方が制約は少ないが吉田氏は「フル3Dをモバイルで気持ちよく使っていただくことにこだわった」「農場ゲーム、箱庭ゲームはアジアを中心に世界で支持されており、世界中で親しまれるプロジェクトにしたい」と述べた。

さらに農場ゲームを選んだ理由として、ユーザーの継続率とアクセス頻度を指摘。例えば、対戦ゲームでは、負けるとゲームが嫌いになってしまうケースが見られるが、農場ゲームは「ユーザーのプレイ継続期間の長さ、アクセス頻度の高さがメリット。持続可能性を大きなテーマに掲げている」と語った。

持続可能性という課題

Web3ゲーム、あるいPlay to Earn(プレイ・ツー・アーン)ゲームは、一時大きな人気を集めたものの、収益を新規参入者に頼ったものが多かったため、持続可能性が課題となり失速した。

吉田氏は「ゲームのトークノミクスは大きく2つに分かれている。ひとつは広告に基づくお金の流れ、もうひとつはゲーム内課金やNFT販売に基づくお金の流れ。広告は非常に大きなテーマで、ゲームであると同時にマーケティング・プラットフォームと位置づけている」と解説。つまりは、広告など外部からの収益、あるいはゲーム内でのユーザーの行動履歴などを蓄積・分析し、マーケティング施策につなげることで収益を確保し、新規参入者に頼らない構造とすることで持続可能性を確保しようというわけだ。

「広告収入は100%ユーザーに還元する。ユーザーがゲーム内でさまざまなアクティビティを行う熱量を広告、つまり外部のお金に結び付けて、ユーザーに還元していく」

一方、ハッシュポートは、ゲーム内課金やNFT販売などの一部を運営の原資に充てていくという。

また吉田氏は、ゲーム成功の重要な要素として「アクセシビリティ」をあげた。ユーザーにとっての使いやすさだ。具体的にはWeb3ゲームでは、アイテムの購入などにウォレットが必要になり、大きなペインポイントとなっている。

「ゲームは、インアプリ・ウォレットを備えており、ゲームをダウンロードすると自動的にウォレットが生成される。ウォレットは大阪・関西万博でハッシュパレットグループが協賛している『EXPO202デジタルウォレット』と同じ基盤を利用しており、ID、パスワード、PINコードだけで秘密鍵の管理ができる。こうしたWeb3技術の相互利用、インターオペラビリティ(相互運用性)に大規模に取り組んでいきたい」

グローバル展開を視野

同日、ハッシュパレットは「THE LAND エルフの森」の海外展開推進に向け、Web3への積極的な投資で知られる香港のアニモカブランズ(Animoca Brands)の戦略的子会社アニモカブランズジャパン(Animoca Brands Japan)との提携を発表。その背景について「グローバルな影響力を持たないと国内のIEOマーケットは成長できないと強い危機感を持っている」と吉田氏は述べ、前回、国内初の事例としてパレットトークン(PLT)をIEOしたときは、まだ国内IEOの後、海外上場への道筋が明確ではなかったが「今回はグローバルに出ていくことを考えている」と続けた。

現在「THE LAND エルフの森」の事前登録者数15万人のうち、その半分弱はインド、フィリピン、インドネシア、ベトナムなどを中心とした海外ユーザーという。

「国内のIEO案件にとって、グローバル展開は非常に重要なポイントになる。ここに我々も腰を据えてチャレンジしたい。IEO後のタイミングで、テンポよくグローバル展開していくと良いサイクルが生まれると考えている」

発表会は、bitFlyerから代表取締役 CEOの加納裕三氏が出席予定だったが、体調不良のため、クリプトストラテジー室 副室長の大和省悟が同社の概要やIEOについて説明。bitFlyer IEOでの第2弾、第3弾の取り組みについては、説明会を進行したbitFlyer Holdingsの執行役員、金光碧氏が「審査体制、社内システムなどを整備することは大変だった。だが日本はIEOが制度化されている唯一の国といえる。当社のような取引所でIEOができる機会は、日本の業界にとって非常に大きな意味があると考えている」と語った。

(金光碧氏と吉田世博氏)

現在、エルフトークンのIEOは20日まで申込受付中。発行総量10億EFLのうち、10%の1億ELFを1ELF 12.5円で販売する。IEOでの調達額は12億5000万円。ビットコインが5万ドルを超え、日本円建てで過去最高値を記録する強気相場を背景に、「多くの人にとって初めてのWeb3サービスになりたい」と吉田氏が語った国内5例目、初のゲームトークンのIEOがどのような展開になるのか。国内IEOの今後のためにも、その推移が注目される。

|文・撮影:増田隆幸