トランプ一家、ミームコイン「TRUMP」で460億円を手に──トークン価格は87%下落

- トランプ大統領一家はミームコイン「TRUMP」で3億2000万ドルの手数料収入を得た。一方、多くの個人投資家は損失を被った。
- トランプ一家の純資産は暗号資産に関連して29億ドル増加、うち40%が暗号資産で保有されている。
- 民主党議員らは、バージニア州にあるトランプ氏のゴルフクラブで行われた暗号資産イベントを問題視し、弾劾を要求している。
トランプ大統領は2019年に暗号資産の価値は「根拠がない」と発言していたが、それからの転換は目覚ましい。今では、この分野の最大の支持者の1人となり、ミームコイン、DeFi(分散型金融)、NFT、ステーブルコインなどに進出している。
State Democracy Defenders Fundによるレポートによると、トランプ一家の純資産は暗号資産に関連して29億ドル(約4200億円、1ドル144円換算)増えており、その40%が暗号資産で保有されているという。
業界とのこうした深い関係は政界にも波紋を広げており、5月8日には超党派で提出されたステーブルコイン法案が議会で否決された。民主党議員らが、トランプ氏が暗号資産から多大な利益を得ていることに懸念を示したためだ。
2024年11月の大統領選勝利以降、トランプ氏の支持によって暗号資産市場では強気相場が継続し、特に2つの動きが顕著となった。ミームコインとビットコインETFを通じた機関投資家の参入だ。ただし、ただし、ミームコインは悪用される可能性があり、個人投資家をリスクにさらす。
Solidus Labsは8日、トークン作成プラットフォーム「Pump.fun」で発行されたミームコインの99%がラグプル(資金の持ち逃げ)またはパンプ・アンド・ダンプ(価格吊り上げ後の投げ売り)に当たると発表した(同社の発表に対して、Pump.funは反論している)。
大多数の個人投資家は損失
また、CNBCが引用したブロックチェーン分析会社Chainalysis(チェイナリシス)のデータによると、TRUMPトークンの保有者の大多数が損失を被ったという。
ミームコインとは、本質的な価値を持たず、その名称のとおり、ネット上のミーム(流行りの画像や言葉など)やマンガやアニメのキャラクターをもとに作成されるトークンで、代表的なものとしてはDOGE(ドージコイン)やSHIB(シバイヌ)、PEPEなどがある。2025年1月、トランプ氏がSNSで自身のミームコイン「TRUMP」を宣伝したことで、その過熱ぶりはピークに達した。直後にはファーストレディーのメラニア夫人のミームコイン「MELANIA」も登場した。
TRUMPは初日に77.26ドルの高値をつけたが、現在は10.80ドル付近、86%下落している。MELANIAは97%以上の下落で、直近では33セントで取引されている。
トランプ氏のSNS投稿による盛り上がりは、多くの個人投資家を呼び込んだ。だがChainalysisによると、個人投資家を中心とした約76万のウォレットが損失を被ったという。
内部関係者は大きな利益
しかし、一部の関係者は損失を免れ、大きな利益を得た。Chainalysisのデータを見ると、58のウォレットが1000万ドル(約14億4000万円)以上の利益を得ている。またトークンの開発元は3億2000万ドルの取引手数料を手にし、そのうちの約5%が、ローンチ元となったDEX(分散型取引所)Meteora(メテオラ)に流れたという。
MELANIAについても、SNSで話題になる前に一部の関係者がトークンを購入する「スナイピング」が行われ、Financial Timesの調査によると、価格が上昇して2倍になった後にUSDCに変えることで、1億ドル(144億円)の利益を手にしたという。
そうした内部関係者の1人、Kelsier Venturesのヘイデン・デイビス(Hayden Davis)氏は2月、YouTuber「Coffeezilla」とのインタビューで自身の関与を認めた。デイビス氏は、アルゼンチンで政治的混乱を引き起こして失敗したステーブルコイン「LIBRA」にも関わっていた。
デイビス氏はインタビューで次のように語った。
「私にとっては大きな危険を招くことになるが、いいだろう。答えよう。私は(MELANIAに)関与していた。チームは、TRUMPのスナイピングが大成功したことで、MELANIAでもスナイピングを行おうとしたと思う。我々は決して大物スナイパーではなかったし、避けようとしていた。我々は流動性を一切ひきだしていない。ゼロだ」
トランプ氏の暗号資産ネットワーク
トランプ一家の暗号資産への関与は、ミームコインにとどまらない。
トランプ一家はDeFi(分散型金融)プラットフォーム「World Liberty Financial(ワールド・リバティ・ファイナンシャル)」も運営しており、今年初めには2回のプレセールで約5億9000万ドルを調達している。当時は市場が史上最高値圏にあったが、その後、相場は下落。現在、同プラットフォームは約1億300万ドル相当の暗号資産を保有しているとArkham Intelligenceは分析している。
2022年には、自身をスーパーヒーローやアニメのキャラクターとして描いたNFTシリーズを発表し、約800万ドルの収益を得たと報告している。
最近では、TRUMPトークン保有者25人を自身が保有するバージニア州のゴルフクラブに招き、暗号資産ディナーイベントを開催した。ブルームバーグによると、25人の参加者のうち19人が外国籍または米国で禁止されているオフショア取引所を利用していたという。
5月後半には、TRUMPトークンの保有者、上位220人を対象にしたディナーも予定されている。
こうした動きを受けて、民主党議員はトランプ大統領の弾劾を要求。米政府倫理局(OGS)に対し、トランプ大統領がトップ投資家たちを招待したことで連邦倫理規定に違反していないかどうか調査を求めている。
トランプ一家にコメントを求めているが、まだ返答はない。
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:ホワイトハウスでの暗号資産サミットで語るトランプ大統領(Jesse Hamilton/CoinDesk)
|原文:Trump Family Profited $320M on Memecoin Despite 87% Decline Since Day One