製薬大手がIBMのブロックチェーンを試験運用する理由

ドイツに本社を置く多国籍・製薬企業のベーリンガーインゲルハイム(Boehringer Ingelheim)は、カナダでIBMが開発したブロックチェーンの試験運用を始める。臨床試験の質の向上を目指す。

ベーリンガーインゲルハイム(カナダ)は2019年2月12日、IBMのブロックチェーン・プラットフォームを活用して、2社が共同して臨床試験における透明性と患者の安全性を向上していくと発表した。

ブロックチェーンの利用を検討する背景として、従来の臨床試験におけるプロセスや記録方法は不完全で、時に誤りにつながることがあると、同製薬会社は説明する。場合によっては、患者を危険にさらすリスクも高まると加えた。

今回の取り組みでは、ブロックチェーンがいかに臨床データの完全性と透明性を担保して、臨床試験プロセスの自動化につながるかを検証する。

「現在の臨床試験を取り囲むエコシステムは、極めて複雑である。本来、重要視されるべき患者を取り巻く環境の質は軽視され、そこには多くのステークホルダーが関与し、十分な信頼と透明性、高効率のプロセスは確保されていない」と、ベーリンガーインゲルハイム(カナダ)の医療・規制関係部でバイス・プレジデントを務めるUli Brödl博士は言う。

一方、IBMカナダのサービス・ジェネラルマネジャー、Claude Guay氏は、こう述べている。

「我々は他の産業でブロックチェーンを活用してきました。今回の取り組みで我々がしっかりと見ていきたいのは、この技術を用いて、患者の健康に関する情報を扱う医療現場で、高い水準のセキュリティーと信頼を提供できるかということです」

ファイザー、アムジェン、サノフィも

ここ数年、他の製薬大手においても、ブロックチェーン技術の利用を検討する動きが見られる。米ファイザー(Pfizer)、米アムジェン(Amgen)、仏サノフィ(Sanofi)は、新薬開発のプロセスを効率化する手法として、ブロックチェーンの有効性を検討している。

独メルク(Merck)は、医薬品がサプライチェーンの中を移動する過程で、それらの偽造品が作られることなく、ブロックチェーンを用いた追跡方法を開発し、その特許の申請を行なっている。2018年4月にはインドの政府系シンクタンク、NITI Aayogが、偽造医薬品の取引を防止するため、ブロックチェーンを活用した手法の開発に乗り出している。

翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:佐藤茂、浦上早苗
写真:Test tubes in medical lab image via Shutterstock 
原文:Pharma Giant Tests IBM Blockchain in Bid to Improve Clinical Trials