インフレ懸念の高まりを受け、ビットコインの長期的なセンチメントは強気から中立へ

- オプション市場の指標が市場センチメントの変化を示していることから、ビットコインの長期的な強気相場は中立に転じたと見られる。
- インフレ率の上昇や期待外れの雇用統計など、経済への懸念がビットコインの最近の価格下落の一因となっている。
- アナリストは、関税やサプライチェーンの問題がインフレ率の上昇につながり、FRBによる利下げの可能性が複雑にするかもしれないと警告している。
かつて自信を持って未来を見据えていたビットコイン(BTC)強気派は、長期的な強気路線への確信を見直しつつある。
これは、デリビット(Deribit)上場のアウト・オブ・ザ・マネー(OTM)のコールオプションとプットオプションのインプライド・ボラティリティ(IV)の差を測る180日間スキューから明らかだ。アンバーデータ(Amberdata)によると、この指標は最近ゼロまで後退しており、長期的な市場センチメントが強気から中立に転じたことを示している。この変化は、一部のアナリストが2026年に弱気相場到来を警告している中で起こった。
暗号資産金融プラットフォームBloFinのオプション取引・リサーチ責任者であるグリフィン・アーダーン(Griffin Ardern)氏によると、前回のビットコイン弱気相場の始まりにも同様のリセットが起きたという。
「最近の市場の反落には、かなり憂慮すべき兆候が見られる。ビットコインの長期オプションに対する強気センチメントは消え、今や完全に中立となっている」とアーダーン氏はCoinDeskに語った。「これは、オプション市場がBTCが長期的な上昇トレンドを確立するのは困難だと見ており、今後数カ月で最高値を更新する可能性が低下していることを意味する」。
「同様の状況は2022年の1月と2月に発生した」と彼は付け加えた。
プットオプションは原資産の価格下落に対する保険となり、コールオプションは非対称的な強気のエクスポージャーを提供する。プラスのスキューはコールオプションへのバイアスを意味し、市場の強気を示唆する。一方、マイナスのスキューは逆のことを示す。

スキューの中立化は、現物市場での保有分に加えて追加の利回りを生み出すために、構造化商品がより高い行使価格のコールオプションを売却したことによるものと思われる。
いわゆるカバードコール戦略の人気が、プットに対するコールのIVの低下を後押ししている可能性がある。
マクロ経済の不安材料
先週、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が重視するインフレ指標であるコアPCE(個人消費支出)が6月に上昇し、非農業部門雇用者数が予想を下回ったことで、経済に対する懸念が高まり、BTCは4%以上下落した。
価格の下落により、短期のスキューはゼロを下回り、トレーダーがプットを通じて下落リスクのヘッジを求めていることを示している。
アーダーン氏によると、「サプライチェーンの衝撃」によるインフレ効果は、すでに経済指標に表れているとのことだ。
「前回のCPI(消費者物価指数)の報告では、自動車価格の低下により他の商品の価格上昇が相殺されたが、一つ確かなのは、西海岸からの刺激が東海岸にも到達し、小売業者はすでに関税や関連コストを消費者に転嫁しようとしていることだ。卸売業者や商品取引会社はサプライチェーンの円滑化に取り組んでいるが、価格の上昇はより緩やか、あるいは数カ月遅れて発生すると予想される」とアーダーン氏は述べ、長期のBTCオプションの中立的な見通しを説明した。
JPモルガン(JPMorgan)によると、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の関税は、今年後半にインフレ率を押し上げる可能性が高いという。
「世界的なコアインフレ率は、主に関税関連によるアメリカでの急上昇により、2025年後半には3.4%(年率)まで上昇すると予測される」と同行のアナリストは指摘し、コスト圧力はアメリカに集中する可能性が高いと付け加えた。
インフレ率の上昇は、FRBの利下げを困難にする可能性がある。トランプ大統領は、FRBが4.25%という高金利を維持していることを繰り返し批判している。
火曜日にはアメリカ経済の重要な部分を占めるサービス部門のインフレ動向を把握できるISM非製造業 PMI(購買担当者景況指数)が発表される。その後、今週後半には7月のCPIおよびPPI(生産者物価指数)が発表される。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin’s Long-Term Bullishness Evaporates From Options Market as Inflation Concern Rises