ニューヨーク州金融サービス局、パクソスに約39億円の罰金──バイナンスのBUSDに関連したコンプライアンス違反で

- ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)は、パクソス(Paxos)に対し、過去のバイナンス(Binance)との提携に関連するコンプライアンス違反を理由に、2650万ドルの罰金を科した。
- パクソスは、コンプライアンスプログラムを強化し、NYDFSの基準を満たすために、2200万ドルの追加投資を行うことにも合意した。
- コンプライアンス上の問題には、不正行為の監視不足や、不十分な本人確認(KYC)プログラムが含まれていた。
ニューヨーク州の最高金融監督機関であるニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)は8月7日、ニューヨーク市を拠点とするステーブルコイン発行会社パクソスに対し、コンプライアンスおよびマネーロンダリング対策プログラムにおける「組織的な不備」を理由に、2650万ドル(約39億円、1ドル=147円換算)の罰金を科したと発表した。これには、世界的な暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスとの過去の提携も含まれる。
罰金に加え、パクソスは、NYDFSの基準に適合させるため、コンプライアンスプログラムの改善にさらに2200万ドルを費やすことにも合意した。
NYDFSのエイドリアン・ハリス(Adrienne Harris)局長はプレスリリースで、「金融サービス局は、調査、監督、そして必要に応じた執行を通じて、暗号資産業界を規制し、消費者と市場を保護する上で、我が国を主導してきた」と述べ、次のように続けた。
「規制対象企業は、事業リスクに対応する適切なリスク管理の枠組みを維持する必要がある。これには、ビジネスパートナーや第三者ベンダーとの関係も含まれる。当局は引き続き説明責任を確保するために重要な措置を講じ、その結果として消費者を保護し、金融システムの完全性を守る」。
NYDFSが特定したコンプライアンス違反は、主にパクソスと世界最大の暗号資産取引所であるバイナンスとの一時的な提携に関連するものであった。
両社は2019年に提携し、バイナンスのドル連動型ステーブルコインであるBUSDを発行した。
このバイナンスとの関係は、最終的にパクソスを窮地に陥れた。2023年には、NYDFSがパクソスによるBUSD発行に関する調査を開始し、米証券取引委員会(SEC)が訴訟を起こす意向を伝えるウェルズ通知をパクソスに送付し(その1年後、SECは執行措置を取り下げると決定した)、パクソスは最終的に、NYDFSの命令によりBUSDの発行を完全に停止することを決定した。
7日に発表された罰金は、NYDFSの調査に関連するものである。NYDFSのプレスリリースによると、調査の結果、パクソスがバイナンスを通じて発生する不正行為を効果的に監視するための適切な管理体制を設けていなかったことが明らかになった。また、不正行為が特定された際も、同社は上層部や取締役会に「危険信号を伝えることを怠った」と、NYDFSは述べた。
パクソスに対する調査では、バイナンス関連のコンプライアンス問題に加え、他のコンプライアンスプログラムの不備も明らかになったと、NYDFSは述べた。
これには、不正な行為者が複数の口座を開設しても検出されないような「粗雑な」本人確認(KYC)プログラムや、パクソスが「マネーロンダリングの明白なパターンを検出することを阻んで」いた「不十分な」取引監視システムが含まれていた。
パクソスの担当者は、NYDFSが特定したコンプライアンス違反は「2年半以上前に特定され、それ以来完全に是正された過去の問題」であると説明し、これらの問題は「顧客の口座に影響を与えることはなく、消費者に損害はなかった」と付け加えた。
「これによって、本件は解決となる。我々はこの問題を過去のものとできることを嬉しく思う」と、同担当者は述べ、次のように続けた。
「パクソスとバイナンスの関係、あるいはBUSDの発行に関して新たな申し立てはなく、パクソスの他のホワイトラベルのステーブルコインは、異なるパートナーと類似のモデルで運営されており、規制上の問題に直面してはいない」。
|翻訳・編集:山口晶子
|画像:T. Schneider / Shutterstock.com
|原文:NYDFS Fines Stablecoin Issuer Paxos $26.5M for Compliance Failures Tied to Binance’s BUSD