世界的腕時計ブランド「G-SHOCK」を展開するカシオ計算機は8月28日、Web3ゲーミングメタバース「The Sandbox」との共同プロジェクト「G-SHOCK CITY先行体験会&記者会見」を都内で開催した。NFT販売や無料ゲームコンテンツの公開を通じ、ブランドの歴史や魅力をメタバース上で体験できる新たな試みだ。
2023年から始動している「VIRTUAL G-SHOCK」プロジェクトの一環。これまで、Web3フィットネスアプリSTEPN GO(ステップンゴー)とコラボしたNFTスニーカーの販売などを実施してきたが、今回はブロックチェーン技術を活用したゲーミングプラットフォームの開発や運営を手掛けるThe Sandboxと連携した。

9月3日には、代表的な4モデル(DW-5600/DW-6900/GA-110/GA-2100)と架空モデルをモチーフにしたNFTアバター「G-SHOCK Droid コレクション」が販売される。さらに9月24日には、自身がG-SHOCKのアバターとなり、ブランドの歴史をアドベンチャー形式で体験できる無料ゲーム「G-SHOCK CITY」が公開予定だ。
この日は、G-SHOCK生みの親であるカシオ計算機の伊部菊雄氏とThe SandboxのCOOセバスチャン・ボルジエ(Sebastien Borget)氏によるトークセッションが行われた。
伊部氏はG-SHOCK開発の経緯に関して、高校の入学祝いに父親から贈られた腕時計を大切に使っていたが「当時の腕時計は精密機械で、落とすと壊れるのが当たり前だった」と振り返る。愛用していたその時計を会社で落としてばらばらにしてしまった経験が、「丈夫な時計を作りたい」と考える出発点になったと述べた。

続けて、当初想定していたターゲットは職場近くで働いていた道路工事の作業員だったと説明。削岩機を使った過酷な現場では壊れるのを恐れて誰も腕時計を着けておらず、「仕事中に時間が分からず不便だろう」と感じたという。その光景が、耐久性に特化した時計を開発する決意につながったと明かした。
フランスから来日したボルジエ氏は、自身もG-SHOCKのファンだという。The Sandboxは「どんなクリエイターでも自由にゲームを作れるプラットフォーム」を目指しており、今回のコラボの目的はメタバース空間に新しい文化を加えることだと説明。同社はこれまで「キャプテン翼」や「北斗の拳」など、世界で人気の日本のIP(知的財産)とコラボしてきたが、アニメや漫画ではない日本発のファッションブランドとの提携は初めてだという。Web3領域で事業展開するパシフィックメタが、両社の橋渡し役を担ったことも明かされた。
アバターになり開発当時を疑似体験
トークセッションに続いては、Web3のゲームインフルエンサーとして知られる「のろいちゃん」が「G-SHOCK CITY」を先行体験。伊部氏もキャラクターとして登場する開発現場の再現シーンを楽しんだ。
伊部氏によると、1981年から始まった開発は失敗の連続で辞職を考えたこともあった。しかし、公園でボール遊びをする少女の姿から着想を得て、時計のモジュール(ムーブメント)をケース内で浮かせ、落下の衝撃を分散させる構造にたどり着いたという。ゲームを見ながら伊部氏は、当時の時代背景までしっかり再現されているとSandboxの表現力に太鼓判を押していた。
無料ゲーム「G-SHOCK CITY」は、9月24日の23時にリリースされる予定で、耐衝撃試験を題材にしたサバイバルレースなども楽しむことができる。リアルとメタバースをつなぐ今回の取り組みは、G-SHOCKの新たなマーケティング手法として注目を集めるとともに、従来のファン層に加え、バーチャル領域ならではの新しいユーザー層への認知拡大にもつながりそうだ。
|文:橋本祐樹
|トップ画像:G-SHOCKとコラボしたThe Sandbox共同創業者でCOOのセバスチャン・ボルジェ氏(左)


