- ビットコイン富裕層の増加が贅沢な休暇需要を牽引する中、プライベートジェット、クルーズ船、ホテル運営会社が暗号資産の取り扱いを開始したと報じられている。
- 有名な「ビットコインでのピザ購入」は、BTCを早期に使いすぎるリスクを浮き彫りにしたが、一部の富裕層の保有者は、現在の高値を価値固定のチャンスと捉えているのかもしれない。
- アメリカやイギリスなどの国では、BTCでの購入はキャピタルゲイン税の対象となるため、商品やサービスの支払いに暗号資産を使用することの魅力は薄い。
ビットコイン(BTC)の最近の急騰が、高級リゾート市場にも波及している。
フィナンシャル・タイムズ(FT)は9月1日、プライベートジェット会社、クルーズ船会社、ブティックホテルが暗号資産(仮想通貨)による決済を導入していると報じた。
例えば、フレックスジェット(Flexjet)傘下のFXAIRは、約8万ドル(約1160万円、1ドル=145円換算)の費用がかかる大西洋横断便でトークン決済を導入。クルーズ運航会社のヴァージン・ヴォヤージュ(Virgin Voyages)は12万ドル(約1740万円)相当の年間パスを暗号資産で販売している。
FTによれば、シードリーム・ヨットクラブ(SeaDream Yacht Club)やザ・ケスラー・コレクション(The Kessler Collection)といったブティックホテルグループも暗号資産決済オプションを追加した。
高級旅行は暗号資産支出に適したニッチ市場だ。10万ドル(約1450万円)規模の支払いでは手数料や価格変動の影響が小さく、事業者は即座に法定通貨への変換が可能である。
顧客にとってビットコイン決済はステータスとしての価値を持ち、過去の強気相場でランボルギーニや高級時計に浪費した動きを彷彿とさせる。今回は時間節約型のプライベートジェットや唯一無二のクルーズが贅沢の対象だ。
とはいえ、経済合理性は別問題だ。ビットコインの最も有名な教訓は2010年に遡る。フロリダのプログラマー、ラズロ・ハニエツ(Laszlo Hanyecz)氏がピザ2枚に1万BTCを支払ったという出来事だ。今にしてみれば、10億ドル(約1450億円)以上の価値がある買い物だった。ビットコインが上昇を続けるなら、今日のジェット機予約も同じ後悔を招くかもしれない。
しかし、利益確定に合理性を見出す者もいる。
ビットコインが8月14日に史上最高値12万4128ドルを記録したことを受け、富裕層の保有者の一部は、マクロ経済のショックで価格が下落する前に利益を確定する好機と捉えている可能性がある。
アメリカの新たな輸入関税に伴うインフレ圧力と、より広範な経済的不確実性が相まって、BTCを容易に10万ドル台以下に押し戻す恐れがある。そうなれば、今日の休暇への浪費は合理的なヘッジ手段となる。
税制上の問題もある。
例えばアメリカの内国歳入庁(IRS)は暗号資産を財産として扱い、BTCの支出は課税対象となる処分とみなされ、キャピタルゲイン課税が発生する可能性がある。イギリスの歳入関税庁(HMRC)も同様の原則を適用し、コインの売却・交換・支出時に課税する。
FTが引用したマッキンゼー(McKinsey)のデータによれば、より大きな背景として、若い富裕層の旅行者がラグジュアリー旅行ブームを牽引しており、2023年から2028年にかけて支出がほぼ倍増すると予測されている。この世代にとって、暗号資産は単なる投資手段ではなく、自由と排他性を約束する体験への支払い手段でもあるのだ。
暗号資産がコーヒーショップで主流の支払い方法になったわけではないが、市場の最上位層では存在感を示しつつある。これが賢明な資産運用となるか、あるいは、もうひとつの「10億ドルのピザ」的失敗となるかは、この強気相場がどれだけ持続するか次第だ。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:ボラボラ島のリゾート(Shutterstock)
|原文:Rich Bitcoiners Are Reportedly Spending BTC on Luxury Holidays: Does This Really Make Sense?


