- 新興市場における暗号資産の普及は、通貨主権と金融の回復力にリスクをもたらすと、信用格付け大手ムーディーズが新たな報告書で指摘した。
- ムーディーズは、米ドルにペッグされたステーブルコインの普及が進むと、価格設定と決済が自国通貨以外で行われるようになり、金融政策の波及効果が弱まると示唆している。
- 報告書によると、暗号資産の保有者は2024年までに推定5億6200万人に達し、2023年から33%増加するという。
新興市場における暗号資産(仮想通貨)の普及は、通貨主権と金融の回復力に対するリスクをもたらすと、信用格付け大手ムーディーズ・レーティングス(Moody’s Ratings)が9月25日に発表した報告書で述べた。
報告書によれば、暗号資産の利用が投資を超えて貯蓄や送金にまで拡大している地域で、このリスクは最も深刻だ。ムーディーズは、米ドルにペッグされたステーブルコインの普及が進むと、価格設定や決済が自国の通貨以外で行われるケースが増え、金融政策の効果が弱まると指摘している。
ステーブルコインとは、法定通貨などの伝統的金融資産の価値に連動するトークンであり、米ドルペッグ型が圧倒的に主流だ。
「これは非公式なドル化に類似した『暗号資産化』圧力を生むが、透明性が低く、規制当局の監視が及ばない」とムーディーズは述べた。
報告書によれば、暗号資産は匿名ウォレットやオフショア取引所を通じた資本逃避の新たな手段ともなり得る。これにより個人が資産を国外へ密かに移動させ、為替レートの安定性を損なう可能性もある。
ムーディーズはまた、暗号資産の保有拡大が新興市場、特に東南アジア、アフリカ、ラテンアメリカの一部地域に集中している点を強調した。これらの地域では、インフレ圧力、通貨不安、銀行サービスへのアクセス制限が暗号資産の採用を促進している。対照的に、先進国での採用は制度的統合と規制の明確化が原動力となっている。
報告書によれば、暗号資産の保有者は2024年までに推定5億6200万人に拡大し、2023年から33%増加した。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
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|原文:Crypto Adoption in Emerging Markets Poses Risks to Financial Resilience: Moody’s


