- 金(ゴールド)の時価総額は30兆ドルを突破し、テック大手やビットコインを上回っている。
- 金価格は1オンスあたり約4380ドルと過去最高を更新、経済の不確実性と地政学リスクが背景にある。
- 投資家が安全資産として米ドルよりも金を選ぶ傾向が強まっており、米経済の安定性についての懸念が広がっている。
金は、伝統的な価値保存の手段だが、「非生産的資産」とも呼ばれる。2025年、金の時価総額は30兆ドルを超え、「デジタル・ゴールド」と言われるビットコイン(BTC)や、テック大手を大きく上回っている。
金価格は1オンスあたり約4380ドルと過去最高を記録。TradingViewのデータによると、年初から66%上昇し、10月だけでも13%上昇した。World Gold Councilによる在庫量21万6265トンをもとに時価総額を算出すると約30.42兆ドルに達する。
主要資産のランキングでは、AI革命を支える中核企業として「世界で最も重要な企業」とも言われるNVIDIA(エヌビディア)は、4.42兆ドルで2位。以下、マイクロソフト、アップル、グーグルの親会社アルファベット、銀、アマゾンが続く。
ビットコインの時価総額は2.17兆ドルで、第8位となっている。
「非生産的」な金が示す経済の疲弊
金がテック大手を上回る時価総額を記録したことは、世界経済にとって必ずしもポジティブとは言えない。金は株式や債券、不動産のように配当や利息、家賃を生み出すことはなく、経済活動に直接寄与しない「非生産的資産」と呼ばれる。その価格は、キャッシュフローや生産性ではなく、安全資産、つまり価値保存の手段としての魅力に依存している。
つまり、金が株式や債券、不動産などの「生産的資産」を大きく上回る水準で取引されている現状は、経済の停滞や不安心理を示すサインと捉えることができる。投資家がより安全な「避難先」を求めていることを反映している。
米大手証券会社Citadel(シタデル)のCEO、ケン・グリフィン(Ken Griffin)氏は最近、投資家がドルよりも金を安全資産とみなす傾向に強い懸念を示し、「金の史上最高値更新は、米経済の安定性に対する警鐘だ」と述べた。
アナリストによると、金高騰の背景には、米国および先進国の財政規律の緩み、根強いインフレ傾向、地政学的緊張、そしてFRBの利下げ観測がある。市場では、上昇トレンドはしばらく続くとの見方が強い。
金が「非生産的な価値保存手段」とされる点は、ビットコインにも共通する。ただし、年初から金価格は60%以上上昇したのに対し、ビットコインは16%にとどまっている。業界関係者の間では、金の上昇が一服した段階で、割安な「デジタル・ゴールド」への資金シフトが起こる可能性があるとの期待もある。
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
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|原文:‘Non-Productive’ Gold Zooms to $30T Market Cap, Leaving Bitcoin, Nvidia, Apple, Google Far Behind


