暗号資産(仮想通貨)専業10年目の墨汁うまい(@bokujyuumai)です。イーサリアムのネイティブ通貨であるETHはバリデータとしてネットワークに参加するためにステーキングを行い、バリデータは報酬と違反行為に対するペナルティによりイーサリアムネットワークに対して誠実に動くことでイーサリアムエコシステムという巨大なネットワークが24時間365日動いています。
これをさらに応用したプロジェクトとして「アイゲンレイヤー(EigenLayer : EIGEN)」があり、暗号資産ベンチャーキャピタルなどから351.75億円(1ドル150円と仮定)の調達でリステーキングが話題となりました。本稿ではアイゲンレイヤーがローンチしたアイゲンクラウド(EigenCloud)及び、アイゲンレイヤーは何がすごくて筆者はプロジェクトに注目しているのかについて投資家向けにわかりやすく解説を行います。
アイゲンレイヤーとは?
アイゲンレイヤーとはイーサリアムのETHをステーキングしているバリデータをアイゲンレイヤー側のバリデータとしてオプトインする選択肢を与え、現状のイーサリアムにおける役割と追加の役割を担ってもらうことで「イーサリアムのセキュリティを裏付けに構築するネットワーク」を指します。
これまでビットコインやイーサリアム以外では電気と並列演算を使用したプルーフ・オブ・ワーク(PoW)で攻撃を受けないほどの十分な計算力を維持することが難しく、ステーキングをベースにしたプルーフ・オブ・ステーク(PoS)でもトークン価格に依存するという課題がありました。
一方でアイゲンレイヤーではセキュリティ裏付けはイーサリアムバリデータであるため、バリデータは自身のETHを失わないために誠実に行動するため、セキュリティはETH裏付けで世界一安全なプラットフォームをローンチから提供できるという利点があるのです。
実際にアイゲンレイヤーは分散金融(DeFi)の中でレンディングのアーベ(Aave)、流動性ステーキングのライド(Lido)に次ぐ3位の利用者数を誇ります。
アイゲンレイヤーのAVSとは?
ではアイゲンレイヤーを誰が使用するのかという点について見ていきましょう。1つの答えはAVS「AVS(自動検証可能サービス)」であり、このオプトインしたイーサリアムバリデータによりプラットフォームは安全に保たれ、新たなエコシステムをイーサリアム上に構築するということになります。
このAVSには例えば
・ハイパーレーン(Hyperlane : HYPER) = ネイティブブリッジの統合を提供
・エスプレッソ(Espresso : ESP) = 異なるL2間の確認レイヤー
などがすでにローンチしているのです。
他にも多くのAVSプロジェクトが開発を行っており、ベンチャーキャピタルから300億円を超える資金調達を行っているのです。
いわばこれらのプロジェクトはイーサリアムエコシステムをさらに1段階上に押し上げる「ミドルウェア」プロジェクトが多く、今後も多くの拡張性を持つプロジェクトがローンチしていくことになるでしょう。
リステーキングが全てではない
アイゲンレイヤーのメインネットローンチはアイゲンDA(EigenDA)のみであり、セレスティアに代表されるような「データ可用性レイヤー」、すなわちアービトラムのようなL2プロジェクトが実行した結果を書き込み、ネットワーク参加者はそれらを容易に検証できることに特化したものがローンチされただけであり、これが真髄とは言えません。
これらはEIGENトークンのローンチと共にエアドロップで注目されたリステーキングでしたが、2025年6月にローンチしたアイゲンクラウド(EigenCloud)からその真髄が伝わってくるのです。
アイゲンクラウドとは?
アイゲンクラウドとは「仮想通貨のAWS」を目指すアイゲンレイヤーのメインプロダクトであり、イーサリアムエコシステムが既にL2で手に入れたTPS(秒間処理能力)ではなく、現在のウェブ2ライクなコントラクトの自由度を上げることを目的としたものです。
AWSはAmazonが提供するクラウドサーバーサービスであり、他にはマイクロソフトのAzureのように多くの企業がサービス提供に使用しています。
現在でこそ分散金融やNFTアート、ゲームなど多岐に渡るイーサリアムエコシステムを使用したプロジェクトが多く存在しますが、未だにその開発環境においてはスマートコントラクト特有の制限があり、これがプログラマビリティすなわち開発可能性という課題があるのです。
そこでアイゲンレイヤーは
・アイゲンDA(EigenDA)
・アイゲンバリファイ(EigenVerify)
・アイゲンコンピュート(EigenCompute)
・アイゲンAI(EigenAI)
という4つのプロダクトで構成するアイゲンクラウド(EigenCloud)をローンチしており、これらを活用することでイーサリアムのセキュリティ裏付けを得つつ、現状のスマートコントラクトにおける制限を緩和、安全な実行環境で既存のウェブ2の膨大なサービスへアクセス可能な「仮想通貨のAWS」を提供しているのです。
これらは暗号学上での実行結果が正しいことを「検証可能(Verifaable)」であり現在はTEE(信頼可能な実行環境)で行われていますが、開発ロードマップでは今後ゼロ知識証明(ZK)を導入し、高速かつ安全な次世代実行環境を実現するのです。
結論と考察
多くの人はアイゲンレイヤーの内容が難しく、リステーキングというイーサリアムバリデータの新たな活用方法で構築するネットワークと考えているでしょう。一方でアイゲンレイヤーが目指すのはプログラマビリティの大幅改善であり、これによってブロックチェーンは既存のウェブ2を大きく凌駕する存在になりえるということになります。
例えばアイゲンコンピュートを利用すればAVSのような複雑なシステム設計を行わず、アイゲンレイヤー上にアプリを展開することができるのです。
これらのアプリはイーサリアムエコシステム上のコントラクトにアクセスすることができ、数年すれば今では予想もできないような分散金融プロジェクトや新たなキラーアプリが誕生していると考えられるでしょう。
イーサリアムが2021年にここまで分散金融が発展することが予測できなかったように、アイゲンレイヤーはイーサリアムエコシステムに無限の可能性を与えるプロジェクトなのです。
|トップ画像:アイゲンクラウドのウェブサイト(キャプチャ)


