韓国市場、ミームコインからマシンチップへの大転換
  • UpbitとBithumbの取引量は前年比で最大80%減少し、韓国の個人投資家の参加と主要暗号資産(仮想通貨)ペアのボラティリティは急減した。
  • KOSPI指数は2025年に70%以上急騰し、その牽引役はAI(人工知能)チップ大手のサムスン電子とSKハイニックス(SK hynix)である。両社の爆発的な台頭は、数百万人もの新規個人投資家を引きつけた。
  • 韓国のトレーダーは投機について全く放棄したわけではなく、単にその方向性を変えただけである。信用取引とレバレッジETFが急増するにつれ、株式は韓国の新たな「カジノ」となった。

長年にわたり、韓国は暗号資産投機の世界的な中心地であり、デジタルの通貨がプレミアム価格で取引されて個人投資家が一夜にして市場を動かす場所となっていた。「キムチプレミアム」は、国民的な熱狂、つまり世界のどの地域にも匹敵しない、熾烈で熱狂的な取引活動を指す呼称となった。

しかし、2025年後半になると、状況は一変した。かつてUpbitで次なるアルトコインの掘り出し物を探していたトレーダーたちは、今や韓国の証券取引所のティッカーに釘付けになり、ミームトークンに向けていた眼がメモリチップや高帯域幅半導体に向けられている。暗号資産のチャートは静まり返り、新たな投機エンジンにお株を奪われた。

静まり返った市場

かつて韓国の暗号資産ブームの中心地であったUpbitは、今やかつての勢いに比べるとほんの少ししか取引されていない。1日あたりの平均取引量は1年前と比べて80%近く減少し、2024年後半の約90億ドルから2025年11月にはわずか18億ドルにまで落ち込んでいる。Wu Blockchainの報道によると、韓国で2番目に大きい取引所であるBithumbも同様の運命を辿り、同時期に流動性の3分の2以上を失っている。

かつては毎晩国民の娯楽だった、小規模なコインとチャットルームの噂話の絶え間ないやり取りは、消え去っている。ボラティリティ自体も崩壊した。かつては1日の取引量が50億ドルから270億ドルの間で大きく変動していたのに対し、2025年には20億ドルから40億ドルの範囲に落ち着いている。

分析を提供する企業であるDuneのデータによると、2018年のピーク時には韓国の取引所で1日あたり28万件の入金があったのに対し、2021年以降は1日あたり5万件を超えることはなかった。

Total Korean exchange transactions (Dune)
韓国の取引所における総取引数(Dune)

新たな熱狂

暗号資産がもたらした空白は長くは続かなかった。個人投資家は別の市場、つまり韓国の株式市場へと移行したのだ。韓国株式市場は史上最大級の急騰を見せている。

KOSPI指数は年初来で70%以上上昇し、複数回も最高値を更新している。 10月だけでも、2001年以来最大の月間上昇率を記録し、21%上昇、日中取引高を17回更新した。この熱狂を牽引しているのは、サムスン電子やSKハイニックスといったAI関連の巨大企業で、両社の1日あたりの取引高を合わせると、取引所全体の4分の1以上を占める。

かつて暗号資産取引が一種の趣味のように行われていた韓国では、こうした心理は馴染み深いものとなっている。個人投資家による投機の姿勢が再び表面化しているが、今回は半導体銘柄が中心となっている。コリアタイムズ(Korea Times)が報じたデータによると、韓国のアクティブ取引口座数は、年末の8657万口座から10月31日時点で9533万口座に急増した。

KOSPI Index (TradingView)
KOSPI Index (TradingView)

個人投資家の熱狂が株式市場にも波及

かつてのミームを軸としたアルトコインの隆盛とは異なり、韓国の株式ブームにはより具体的な基盤が存在する。 世界的にAIはこの10年間の成長ストーリーであり、韓国はAIの最も重要なサプライチェーンの一つを抑えている。

NVIDIAとAMDが世界のAIハードウェア需要の大部分を牽引する中、サムスン電子やSKハイニックスといった韓国企業は不可欠な存在となっている。AIトレーニングの主要なコンポーネントである高帯域幅メモリ(HBM)における優位性により、両社は韓国を代表するトップ企業へと躍り出た。

更に韓国国内市場の活性化に熱心な政府の力も加わり、一部のアナリストが「政策支援による強気相場」と呼ぶ状況が生まれている。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領率いる政権は、長年続いてきた「韓国ディスカウント」の縮小に向けた改革を推進し、配当の引き上げ、ガバナンスの強化、そして韓国国内個人投資家と機関投資家へのインセンティブを促している。

同じ精神、異なるカジノ

韓国の暗号資産コミュニティにおける投機は、抑制的なものではなく、リズムとスピードが重要だった。それは今も不変だ。信用取引は再び活況を呈し、レバレッジETFは飛ぶように売れ、個人投資家の参加はわずか1年で倍増した。ブルームバーグのデータによると、レバレッジをかけた個人投資家のポジションは現在、総保有量の約30%を占めており、若手トレーダーが先頭に立っている。

言い換えれば、暗号資産から株式への移行は後退ではなく、リスク選好の再配分である。韓国人は投機を放棄したわけではない。彼らは単に、レバレッジが正当に感じられ、上昇が愛国心を掻き立てる場を見つけただけなのだ。

しかし、この変化には同時に結果が伴う。流動性のアンカーとしての韓国の個人投資家を失ったことで、世界の暗号資産市場は最も安定した買い手を失った。かつて韓国のチャットルームを沸かせたミームコインの上昇は、今や急速に勢いを失っている。そして、市場全体が新たな刺激を必要としている。ビットコインは1か月前に史上最高値を記録したにもかかわらず、現在は10万ドル前後で取引されている。一方、複数のアルトコインは過去1か月で20%超も下落している。

次なる刺激剤

暗号資産の「キムチトレーダー」たちは姿を消したかもしれないが、歴史は彼らが永遠に消え去るわけではないことを示している。アナリストが近い将来にAI取引が冷め始めると示唆しているように、あるいは次の大きな暗号資産の話題が到来すると、同じトレーダーたちが新たな資金と鋭い反応力を持って勢いよく戻ってくる可能性がある。

今のところ、韓国の個人投資家はブロックチェーンを回路基板に切り替えて、別分野で同じ興奮を追い求めているようだ。

|翻訳・編集:T.Minamoto
|画像:Shutterstock
|原文:The Great Korean Pivot: From Memecoins to Machine Chips

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