- ビットコインは6月以降、10万ドルを超えるレンジで取引されており、明確な方向性が見られないにもかかわらず、市場は活発に動いている。
- このレンジ内で約590万BTCが動き、イーサリアムの時価総額を上回った。
- これらのBTCのほとんどは、リスク許容度の低いトレーダーの手に渡っている。
6月以降のビットコイン(BTC)相場を要約するなら、「レンジ相場」「方向性不明」ということになるだろう。
価格は概ね10万ドル台で推移し、明確な方向性はない。だがこのレンジ相場を停滞と誤解してはならない。10xリサーチ(10x Research)の最新の報告書によれば、この範囲内で数十億ドル相当のBTCが取引されており、市場に重大な影響を与えている。
10xリサーチの創業者、マーカス・ティーレン(Markus Thielen)氏は11月7日の顧客向けレポートで、直近数カ月間に約590万BTC(時価総額で約5880億ドル、約91兆1400億円:1ドル=155円換算)が10万ドルから12万6000ドルの間で移動したと指摘した。この金額はイーサリアムの時価総額約4280億ドル(約66兆3400億円)を大きく上回る。いわゆる「退屈なレンジ相場」の中で取引された価値としては驚異的な規模だ。
では、このオンチェーンの流動性変動が重要である理由はなにか。
ティーレン氏によれば、これらのコインの大部分は現在、確信が持てない投資家や、リスク管理担当者や懐疑派からの圧力を受ける機関投資家の手に渡っている。価格がさらに下落した場合、これらの保有者はパニック売りを行う可能性があるのだ。
「これらのコインの多くは脆弱なバランスシート上に存在する。脆弱なのは確信がないということではなく、機関投資家のリスク管理部門やビットコイン懐疑派の経営陣が最終的にポジション解消を迫る可能性があるということだ」とティーレン氏は指摘した。
さらに彼は、10万1000ドル付近だけで約34万7000BTCが取引されたと付け加え、重要な価格水準付近で取引が集中している実態を浮き彫りにした。
これらを総合すると、BTCが10万ドルを下回った場合のリスクは高まる。
10万ドル割れにおける重要水準
ティーレン氏は、この水準割れが脆弱な保有者による売却を誘発し、9万3000ドルを中心とした流動性の「エアポケット」と呼ばれる領域への下落を加速させる可能性があると警告した。このエアポケットは、最後の大きな買い需要が集中している。
言い換えれば、価格チャートには表れないボラティリティが水面下で潜んでいる可能性がある。数百万BTCが不安定な保有者に移動し、均衡が崩れようとしているのだ。
11のビットコイン現物ETF(上場投資信託)の平均取得コストが9万ドル近辺であるため、9万3000ドル以下への下落はボラティリティ増大の引き金となり得る。「価格下落圧力が加速すれば、ETFに流入した605億ドル(約9兆3775億円)の資金は即座に精査の対象となるだろう」とティーレン氏は述べた。
記事執筆時点で、CoinDeskのデータによればBTCは10万5000ドル付近で取引されている。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin’s $588B Range Masks Market Vulnerabilities: 10x Research


