- 休眠状態だったカルダノのウォレットが取引を実行し、極端なスリッページにより600万ドルの損失を被った。
- このウォレットは1440万ADAを84万7695USDAと交換したため、ステーブルコインの価格が一時的に急騰した。
- この事象は、スリッページチェックなしに流動性の低い市場で大量の取引を行うリスクを浮き彫りにしている。
休眠状態だったカルダノ(Cardano)のウォレットが、今年最も極端なスリッページ事象を引き起こした後、単一のスワップで600万ドル(約9億3000万円、1ドル=155円換算)以上を蒸発させた。
2020年9月以降、一切の活動が確認されていなかったこのアドレスの保有者は、11月16日に再びチェーン上に現れ、1440万ADA(約690万ドル、約10億6950万円相当)を、あまり知られていないカルダノネイティブのドルペッグ型ステーブルコインであるUSDAわずか84万7695枚と交換した。
この取引は、オンチェーン調査のZachXBTが自身のテレグラムチャンネルで最初に指摘した。

このユーザーは実質的にUSDA1枚あたり8ドル以上を支払ったことになる。USDAは1ドル近辺でペッグされるべきであり、時価総額がわずか約1060万ドル(約16億4300万円)であることを考慮すると、破滅的な価格だ。この取引により約605万ドル(約9億3775万円)の価値が瞬時に消滅した。
CoinGeckoによれば、オンチェーンの流動性が乏しい状況下で、この注文によりカルダノDEX上のUSDA価格は一時1.26ドル近くまで急騰した。USDAはペッグ値を一時的に大きく上回った後、グジラレベルの注文の清算が完了して流動性が正常化すると、約1.04ドルまで戻った。
当該アドレスはUSDAの取引履歴がなく、ユーザーが誤操作したのか、ステーブルコインのティッカーを混同したのか、あるいは成行注文式スワップで流動性が維持されると想定したのかは不明だ。ティッカー選択の誤りは十分にあり得る。USDAは広く取引されておらず、カルダノエコシステムにはよく似たティッカーを持つ複数の米ドル建て資産が存在するからだ。
この事例は、大口トレーダーが流動性の低いプールを避け、スリッページチェックなしに自動マーケットメイカー経由で大量注文を流さない理由を如実に示している。たとえ数百万ドル規模のADAでも、プールの反対側(買い手側)の資金が乏しい場合、分散型流動性を圧倒するのだ。
過去の相場サイクルでも、トレーダーはティッカーの誤り、流動性ゼロのプール、集約業者経由の過度に積極的な成行注文により、何度も数百万ドルレベルの損失を被ってきた。
カルダノ上でこのミスがトレーダー界隈に衝撃を与えているのは、関与したステーブルコインのためではなく、5年間手つかずだったウォレットが突然目覚め、たった一度の誤った価格設定のスワップで数百万ドルを消失させたからだ。
これは休眠資本が現代の流動性トラップに遭遇し得るという厳しい教訓であり、オンチェーン取引が規模・速度・スリップに対して容赦ないことを改めて示している。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:‘Fat-Finger’ Fail? Cardano Whale Torches $6M After Hitting Illiquid USDA Pool


