- NYDIGのグレッグ・シポラロ氏は、ビットコインの価格下落は市場センチメントというよりはむしろ市場メカニズムに牽引されており、主要な需要源が反転していると指摘した。
- 現物ビットコインETFからは継続的な資金流出が確認されており(11月には35億5000万ドル)、ステーブルコインの供給量は減少している。これは資本が市場から流出していることを示す。
- シポラロ氏は、短期的な環境は不安定になる可能性があると警告しているが、長期的には強気な見通しを維持しており、投資家は不安定な状況に備えるべきだとアドバイスした。
NYDIGのグローバルリサーチ責任者であるグレッグ・シポラロ(Greg Cipolaro)氏は、ビットコイン(BTC)が8万4000ドル(約1302万円、1ドル155円換算)まで下落したのは市場のムードよりもメカニズムによるものだと述べた。同氏はレポートの中で、2024〜25年の上昇局面を支えた主要な原動力が逆行していると指摘した。
このサイクルの主要な需要源であった現物ビットコインETF(上場投資信託)では、現在継続的な償還が発生している。レポートによれば、このETFによって今年上半期に数十億ドルがビットコインに流入したが、直近5日間の資金流入を追跡した数値はマイナスに転じた。
SoSoValueのデータによると、このETFは11月月初からこれまでに35億5000万ドル(約5503億円)の流出を記録しており、発売以来で最大の月間流出額になる見込みだ。現在の流出額は2月に記録した35億6000万ドルをやや下回っている。
積極的な資本逃避
ステーブルコインも同様の兆候を示している。
総供給量は数カ月ぶりに減少し、アルゴリズム型ステーブルコインのUSDEは10月10日の清算ショック以降、発行済み供給量の半分近くを失った。NYDIGのシポラロ氏は、この減少は資金が待機するのではなく市場から撤退していることを示していると指摘した。
シポラロ氏は、「バイナンス(Binance)で0.65ドルまで値下がりした売り相場における役割を踏まえると、急激な縮小は資本がシステムからどれほど積極的に引き出されたかを示している」と述べた。
レポートでは、他の要因も資本流出を示唆していると指摘された。
純資産価値に対するDAT(デジタル資産トレジャリー)株のプレミアムを軸とした企業トレジャリー(財務)取引も崩壊した。プレミアムがディスカウントに転じるにつれて、ビットコイン購入のために株式を発行していた企業は、資産を売却したり自社株の買戻しを実施したりしている。例えば、シークアンス(Sequans)は今月、債務削減のためにビットコインを売却した。
シポラロ氏は、「重要なのは、こうした反転はかつて強力な需要のエンジンだったDATが潜在的な逆風へと明確にシフトしていることを示す一方で、財務難の兆候を示したDATはまだ存在しないことだ」と指摘。「レバレッジは控えめなままであり、利息の義務は管理可能で、多くのDAT構造では発行者が必要に応じて配当やクーポンの支払いを停止できるようになっている」と述べた。
価格下落局面ではストラテジー(Strategy)やエルサルバドルなどによるビットコインの大量購入も行われたが、価格下落を止めることはできなかった。シポラロ氏は、「こうした大規模な購入が下落を鈍化すらもさせられなかったという事実は、象徴的だ」と述べた。
シポラロ氏は、こうした反転は10月10日の190億ドル(約2兆9450億円)の清算イベントにより引き起こされたフィードバックループを形成していると主張した。かつて価格を押し上げたメカニズムが今や下落を加速させているのだ。
シポラロ氏の見解では、投資家は「最善を期待しつつ最悪に備える」べきであり、「長期的な理論はいまだ有効だが、短期的な環境は使い古されたサイクルメカニズムによって形成される可能性がある」と指摘した。
さらにシポラロ氏は、「歴史は次の局面が不安定になりうることを示唆しているが、長期的な確信は長期投資家にとって重要な資産であり続けている」と述べた。
|翻訳・編集:林理南
|画像:CoinDesk
|原文:ETF Outflows, Stablecoin Flows and DAT Reversals Signal Crypto Capital Flight: NYDIG


