暗号資産(仮想通貨)規制のあり方を議論する金融庁の「暗号資産制度に関するワーキング・グループ(WG)」が、いよいよ大詰めを迎えている。
金融商品取引法(金商法)への移行自体は既にほぼ確定的な流れとなっているが、具体的な規制内容や事業者の義務範囲をどう定めるかという制度設計の議論は、報告書の取りまとめに向けた最終盤に差し掛かっている。
CoinDesk JAPANが別途、金融庁に取材したところによると、ワーキング・グループの議論終結後は、まず報告書が取りまとめられ、金融審議会の総会での報告を経て法案化のプロセスに進むのが一般的な流れだという。
今後のスケジュールについて金融庁は、「(暗号資産の法律改正は)早期の国会提出を目指しており、通常国会に法案を出す時の過去の例では、年内中に報告書をまとめているケースが多い」とコメントしている。
そうした中で開かれた直近の第5回WG(11月7日開催)では、提示された規制案に対し、委員や事業者から懸念の声が上がった。
委員の有吉弁護士は、一連の規制案について「重厚で、全体として非常に多くの対応を求める内容になっている」と指摘。
続いて、事業者サイドからは日本ブロックチェーン協会代表理事の加納裕三氏(bitFlyer)が、現状の規制案を「イノベーション1、規制9の肌感覚」と表現した上で、「このままでは業界が存続できない」と危機感をあらわにした。
こうした規制強化の流れを裏付けるように、11月25日には日経新聞が、金融庁が交換業者に対し、不正流出に備えた「責任準備金」の積み立てを義務付ける方針であると報じた。
制度改正の議論がまさに最終局面を迎える中、事業者の切実な訴えは、報告書の取りまとめにどう影響を与えるのか。規制とイノベーションのバランスを当局はどう捉えているのか。
CoinDesk JAPANは金融庁に対し、これらの点について書面で質問を送付した。このほど得られた回答の全文を以下に掲載する。
──第5回会合では委員や事業者から「重厚すぎる」「イノベーション1、規制9の肌感覚」といった切実な指摘があった。現在の規制案のバランスをどう評価しているか。また、これらの意見は今後の議論の方向性にどう影響するか。
金融庁:
・今般の金融審議会のワーキング・グループにおける規制見直しの議論は、暗号資産の投資対象化や、詐欺的な投資勧誘等が生じていることを踏まえ、暗号資産の特性に応じた金融商品としての規制を整備することにより、利用者保護の充実を図る観点から行われています。
・規制見直しに当たっては、利用者保護を通じたイノベーションや、暗号資産の多様性や暗号資産に関連する技術・ビジネスは変化の速い分野であることを踏まえた規制の柔軟性、といった観点に留意すべきとワーキング・グループで議論されていると承知しています。
・金融庁としては、大臣の金融審議会への諮問文にも記載されているとおり、利用者保護とイノベーション促進の双方に配意しつつ、暗号資産を巡る制度のあり方について、ワーキング・グループで引き続き検討を行っていただきたいと考えています。
──事業者からは「9割が赤字であり、存続できない」と経営危機を訴える声が上がった。規制強化が業界の縮小や淘汰につながるリスクをどう考えるか。緩和措置や段階的な施行の可能性はあるか。
金融庁:
・金融審議会のワーキング・グループにおいて、オブザーバーである業界団体から事業者の負担についてご指摘があったことは承知しておりますが、暗号資産の投資対象化を踏まえると、利用者保護の充実を図り、健全な取引環境を整備することが不可欠であり、それを通じて市場の活性化にもつながるものと考えています。
──報告書の取りまとめに向け、事業者への追加ヒアリング等は検討しているか。また、年内の取りまとめ、来年の通常国会への法案提出というスケジュールに変更はないか。
金融庁:
・金融審議会のワーキング・グループでは、これまでも、暗号資産の業界団体の方々にはオブザーバーとしてご出席いただき、暗号資産取引市場の現状や自主規制活動の内容についてヒアリングを実施し、ご意見もいただいてきたところです。
・次回会合においても、引き続き、暗号資産の業界団体の方々にはオブザーバーとしてご出席いただき、必要に応じてご意見をいただいた上で、ワーキング・グループとして、報告書の取りまとめに向けたご議論をいただきたいと考えています。
・その上で、今後のスケジュールについては、ワーキング・グループのご議論次第のため、予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思います。
なお、第6回ワーキング・グループは、あす26日に開催される。本記事でお伝えした金融庁の姿勢と、存続を懸ける業界側の議論がどう交錯するのか、その行方が注目される。
|文:栃山直樹
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