ビットコイン強気派、30億ドル規模の清算リスクに直面──マイナーはAIシフトに向け3億ドル積み増し
  • ビットコインは、FRBが予想どおり25bpsの利下げを行ったことを受けて、9万3000ドルを割った。
  • マイナーは11月23日以降、3000BTCを準備金に積み増し。ビットコイン価格の低迷とAI投資計画を前に売却を渋っている。
  • 市場は、マラソンなどの大手マイナーがAIシフトに向けてビットコインを売却する可能性を懸念している。

ビットコイン反落、マイナーは準備金を積み増し

ビットコイン(BTC)は12月11日、FRB(米連邦準備制度理事会)が広く予想されていた25bps(ベーシスポイント)の利下げを実施した後、投資家が「ニュースを売る」で利益確定に動いたため、9万3000ドルを割った。市場はほぼ1週間前から利下げを織り込んでいたため、材料が出尽くしたところで大口投資家が売りに動いた形だ。

一方、ブルームバーグがマイナー(マイニング企業)のAI(人工知能)シフトを報じた中で新たな懸念が浮上した。AI関連の設備投資がかさみ、多くのマイナーが採算割れに追い込まれていることから、「暗号資産の冬」のような厳しい状況が再来するのではないかとの懸念が高まっている。

〈マイナーは11月23日〜12月11日、3000BTCの準備金を積み増した。出典:CryptoQuant〉

マイナーは、ビットコインが直近の市場下落局面で数カ月ぶりの安値8万2000ドル付近まで下落した時点から準備金を積み増している。CryptoQuantのマイナー準備金データは、主要マイニング企業およびプールのウォレットが保有しているビットコインの変化をリアルタイムで追跡する。マイナーの保有量は11月23日時点の180.38万BTCから増加を続け、当記事執筆時点で180.68万BTCに達している。

AI関連コストがかさむ中、市場はマイナーの売却リスクを警戒

マイナー準備金の増加は通常、短期的な強気要因となる。新規発行されたビットコインが市場に出回るペースが鈍るためだ。11月23日以降にマイナーが積み上げた3000BTCは、約2億8000万ドル(約440億円、1ドル=157円換算)に相当する。

だが、ブルームバーグが報じたAIをめぐる動きは、準備金の増加をネガティブに捉えるものだ。オラクル、グーグル、メタなどの巨大テック企業でAIインフラ投資が爆発的に増加し、記録的な設備投資が常態化している。ビットコインマイナーも同様のシフトを準備しており、その費用を捻出するため、最終的に大量のビットコインを売却する可能性がある。

Marathon Digital Holdings(マラソン・デジタル・ホールディングス)はその顕著な例だ。同社は第3四半期決算で、AIおよび高性能コンピューティング向けデータセンター構築に、財務準備金から50億ドル超を割り当てると発表、さらに30億ドルを調達する計画だ。Core Scientific(コア・サイエンティフィック)、TeraWulf(テラウルフ)、Bitfarms(ビットファームズ)もAIインフラにシフトしており、大手テック企業からの需要増に対応している。

ビットコインマイニングとAIインフラの関連性の強まりは、ビットコインをグローバルなAI市場のバリュエーションサイクルとより密接に結びつける。AIセクターは、ソフトバンクが11月、保有していたエヌビディア株をすべて売却したことを受けて、過熱感をめぐる議論が再燃している。

2025年11月に1100万ドルを調達し、スマートフォンでAIノードを実行する分散型ネットワークを手がけるAcurastの創業者兼CEO、Alessandro De Carli(アレッサンドロ・デ・カーリ)氏は、AIコンピューティングは最終的に大規模施設から消費者が持つスマートフォンに移行すると語った。

同氏は、AI利用におけるプライバシーと機密性に対する需要が高まっていることに触れ、スマートフォンは最もパーソナルなデバイスと指摘した。

また、スマートフォンメーカー各社は、スマートフォン上でのAIコンピューティングを効率的に実行するために研究開発に数十億ドルを投じており、コスト負担の大きい集中型AIインフラへの依存を減らしつつ、ユーザーのプライバシーニーズに応える動きが進んでいると述べた。

ビットコイン価格予測:流動性マップが示す重要水準は9万6700ドルと8万7200ドル

ビットコインは10日、横ばい推移が続いたが、CoinGlassの30日間清算ヒートマップは、今後数日間の方向性を左右する可能性が高い重要な流動性クラスターを示している。ショートレバレッジは93億ドルで、ロングの72億ドルを上回っており、弱気優勢となっている。

上値方向では、9万6700ドルに最大の流動性ポケットがあり、40.5億ドル相当のショートポジションが集中している。この水準は、FRBの利下げ前に9万5000ドルを突破できなかったビットコインが反発を試みる際、ショートスクイーズの焦点となる最大の短期的レジスタンスとなる。

〈Bitcoin Liquidation Map、出典 : Coinglass〉

下値方向では8万7200ドルに大きな流動性ゾーンがあり、この水準を下抜けると32.7億ドル超のロングポジションが一掃される可能性がある。

マイナーが準備金に3000BTCを積み増す一方で、AI関連の資金需要が増大し、上下に流動性クラスターが形成されている状況から、ビットコインは8万8000ドル〜9万6900ドルのレンジで横ばいが長引く展開が見込まれる。

9万6900ドルを上抜けすれば強気モメンタムが回復する可能性があるが、8万7200ドル付近まで下落した場合、マイナーがAIシフトのための資金を検討する中で、より深い調整局面に入るリスクがある。

|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|トップ画像:CryptoQuant

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