米インフレデータ発表を前に、ビットコインは大きく変動
  • ビットコインの価格は過去24時間で8万6000ドルから9万ドルの間で変動し、市場の不確実性を反映している。
  • アメリカの11月のインフレデータは、消費者物価指数(CPI)が3.1%上昇すると予想されており、FRBの金利決定に影響を与えるかもしれない。
  • 暗号資産市場は、MSCI指数からの除外の可能性によるさらなる圧力に直面しており、大規模な資金流出につながる可能性がある。

暗号資産(仮想通貨)トレーダーは過去24時間、ビットコイン(BTC)価格が8万6000ドルから9万ドルの間で激しく変動したため、市場の見極めに苦労した。

12月18日はこれからさらに動きが活発化する可能性がある。11月のアメリカの主要インフレ指標が発表されるからだ。政府機関の閉鎖が10月データを無効にし、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が状況を把握できなかったため、この指標は経済における物価上昇圧力を改めて示すものとなるだろう。

データが示す内容

ファクトセット(FactSet)のコンセンサス予想によれば、11月の消費者物価指数(CPI)は前年比3.1%上昇と、10月の3.0%から加速すると見られる。変動の激しい食品・エネルギー価格を除いたコアCPIも3.1%と予測されている。

これは依然としてFRBの目標である2%を1ポイント上回っており、FRB内のタカ派が利下げ期待を弱める発言をする可能性を高める。現在は、市場はも2026年に少なくと2回の25ベーシスポイント(bp)の利下げを予想している。

専門家の見解

「今回の発表は大きな注目を集めている。主な理由は、最近の政府閉鎖に伴うデータ混乱でFRB(および市場全体)が不完全な情報の中で判断を迫られたからだ。10月の報告が中止されたため、数週間ぶりの物価動向に関する包括的な分析となる」とケンブリッジ大学(Cambridge University)クイーンズ・カレッジ(Queens’ College)学長、アリアンツ(Allianz)非常勤チーフエコノミスト、グラマーシー・ファンド・マネジメント(Gramercy Fund Management)会長を務めるモハメド・A・エル-エリアン(Mohamed A. El-Erian)氏はXで述べた。

同氏はさらに、市場が注目する点は2つだと付け加えた。サービス部門のデフレ傾向が持続するか、そして商品インフレにおける関税起因の価格転嫁がどれだけ残っているかだ。

ビットコインが反応する可能性

データがディスインフレを裏付ける場合、市場は2026年の追加利下げを織り込み始め、金融市場でのリスクテイクを活発化させる可能性がある。ただし、16日に発表された雇用統計は失業率が2021年9月以来の高水準を示していたが、BTCが持続的な強気反応を示さなかった点は留意すべきだ。

加えて、10年物国債利回りはFRBの緩和政策にもかかわらず、ここ数カ月、粘り強く4%台で推移している。これはインフレの不確実性が一因だ。消費者物価指数(CPI)は5月の2.3%から10月には3%へと着実に上昇している。

10年物のような長期利回りは、投資家のインフレ動向・経済成長・FRB政策への見通しを反映している。利回りの上昇はこれらの分野への期待感の高まりを示し、固定利回り商品の魅力を高める一方で、リスク資産の魅力を損なう。

こうした背景の中、予想を上回るインフレ報告は利回りをさらに押し上げる可能性があり、ビットコイン強気派にとって事態を複雑にするだろう。

暗号資産の課題

暗号資産固有の要因も追い風になっていない点に留意すべきだ。例えば、MSCIによる暗号資産保有企業の指数適格性の見直しは大きな逆風となる。

シンガポールのQCPキャピタル(QCP Capital)の市場分析チームは「MSCIは暗号資産運用会社の指数適格性を審査中であり、暗号資産へのエクスポージャーが50%超の企業は除外される可能性がある。実施されれば、パッシブ運用からの流出額は最大28億ドル(約4340億円、1ドル=155円換算)に達し、すでに脆弱な市場にさらなる圧力を加えるだろう」と指摘している。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin is all over the place ahead of U.S. inflation data

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