【墨汁うまい氏寄稿】仮想通貨の現在と未来 「いつか」は来ない。行動した者だけが、未来を掴む。【サンワード証券主催イベントレポート】

暗号資産(仮想通貨)専業10年目の墨汁うまい(@bokujyuumai)です。今回は”仮想通貨の現在と未来 「いつか」は来ない。行動した者だけが、未来を掴む。”と題した仮想通貨イベントに登壇してきました。本稿では3時間半のこのイベントのうち、日本の暗号資産における申告分離課税を適応するための金融商品取引法における利点と課題を抜粋してイベントレポートをお届けします。

2025年12月6日、61年の歴史を持つサンワード証券は墨汁うまいをメインパーソナリティに株式会社gumiの創業者でフィナンシェ CEOの國光宏尚氏、NFTコレクションCryptoNinjaプロデューサーのイケハヤ氏、インスタグラムで投資情報を発信するあき氏が登壇。

暗号資産に金融商品取引法を適応の意向

金融庁は2025年1月の第二次トランプ政権発足後、暗号資産推進派であるドナルド・トランプ氏のビットコインやイーサリアムを準備金とする大統領令やステーブルコイン支持などを鑑みて、ついに重い腰を上げて暗号資産の金融商品取引法(以下金商法とする)への引き上げと、それに伴う分離課税への意向方針を固めている。現在は金融庁ワーキンググループにより有識者を集めた議論が行われており、分散金融(DeFi)やNFT、ガバナンスといった多彩なユースケースを持つ暗号資産における規制について取り組みを行っているが、分類や定義の複雑さが税制面の優遇に反して投資家の不利益につながる懸念が考えられるだろう。

暗号資産の最大110%課税という現状から20.315%へ

現行税制では2017年に施工された資金決済法で暗号資産は規制されており、当時はビットコインやイーサリアムなどを暗号資産交換業者、いわゆる仮想通貨取引所が支払い手段として推進していたことが主な理由だと墨汁うまいは考えている。

日本国内における暗号資産の投資ハードルとして問題視されているのは、暗号資産を相続した場合の最大税率は110%という点だ。これは個人暗号資産投資家は得た利益を雑所得で申告、すなわち総合課税で所得税と住民税を合わせて最大55%であることが理由だ。所得や資産規模によるが、相続税の最大55%を支払う時に暗号資産を売却すると雑所得で最大55%となった時、合計で110%の税金支払い義務があるということになる。

また相続でないにしろ、例えばほぼ0円で取得した暗号資産が暴騰して1億円になった際、税率は約50%となり、いわゆる「億り人」でも個人投資家であれば資産は約5000万円しか手元に残らないことになる(他に所得がないものとする)。

これらは若者に投資が浸透している現代において、暗号資産を投資選択肢とするのに心理的なハードルが日本国内ではあるということだ。この投資が浸透してきている理由はNISAの特定非課税口座が理由であることから、申告分離課税として所得税と住民税をあわせて20.315%が適応すれば新規ユーザーが増える見込みが大いにあるということになる。

2017〜2018年の暗号資産(仮想通貨)バブル時とは異なり、現在は分散金融でETHを貸し付けて金利を得たり、ETHを担保にステーブルコインを借り入れ、さらには手軽な売買だけでなくレバレッジをかけたデリバティブ取引をイーサリアム上などで行うことができる。これらの税制改正による恩恵はこれらの「新たな資産クラス」といえる広大な暗号資産の世界により気軽にアクセスできることになるだろう。

〈金融商品取引法の適応における暗号資産投資家の利点。出典:墨汁うまい〉

暗号資産の金商法適用における弊害

これらの税制面や暗号資産が構築する新たなデジタル経済に気軽にアクセスできるようになる一方、金商法を適応するにあたっての既存暗号資産投資家や事業者、暗号資産交換業における不利益となる側面を墨汁うまいは問題提起している。

例えば暗号資産取引所(仮想通貨取引所)は日本の規制の不確かさにより、事実上2017年の規制後に海外暗号資産取引所と比較して新たなサービスを提供できていない。この背景により金融庁の無登録の暗号資産業者は規制を遵守する必要がないケイマン諸島などに所在地を持ち、多くのサービスを提供することで世界中からのユーザー獲得につなげてきた。

これらの背景から多くのユーザーは分散取引や海外暗号資産取引所を利用しており、国内の規制を遵守する暗号資産取引所はお互いのビジネスを守る事実上のライバル関係にある。現状ETHを購入後、自分のウォレットに出金してしまえば国内の限られたわずかなサービスから、無限大の可能性がある分散金融やNFTなどにアクセスできてしまうわけだ。

さらに国内では自主規制で暗号資産デリバティブは2倍レバレッジしか利用できない一方、ハイパーリキッド(Hyperliquid)などのパーペチュアル分散取引所ではレバレッジ40〜100倍なども利用できる。

故に国内サービスの限られた選択肢では、ユーザーのアテンションを引くことはできず、収益化が厳しいというのが実態なのである。

〈投資家保護を主とした際の不利益と課題。出典:墨汁うまい〉

ここに金商法の適用で投資家保護が重視されることで、国内事業者の現状でさえ厳しい収益状況に拍車をかけることで、さらに自己ビジネスを守ることでライバルがバイナンスのような外資系が有利な状態となってしまい、手数料を下げるなどのユーザー利益に繋がらない可能性があるだろう。

一方で投資家保護による手数料が高いことで収入源となっている販売所への誘導についても問題視されており、国内での暗号資産ビジネスがさらに大変になることを墨汁うまいは懸念している。

またどのトークンを分離課税にするかという定義は適切なものは不可能であり、常に新しいものが出続ける暗号資産においてリスト化は悪手であると言えるだろう。

国内ブロックチェーンビジネスを支援すべき

また墨汁うまいは直近サービス提供を終了したブロックチェーンゲームのクリプトスペルズを例に上げ、国内ブロックチェーン企業の支援をするべきであるとしている。これは経済産業省が「地理的制約や資源制約に縛られず、サイバー空間における新たな成長フロンティアとなり得る」として掲げるWeb3の国家戦略という名前の一方、暗号資産取引所だけでなく国内発のプロジェクトはどこもサービスを維持できずに撤退をしているためだ。

ブロックチェーンベースのサービスはその仕組からかならずトークンが関わってくるため、金商法における投資家保護の強化はよりこれらのブロックチェーンベースの事業者にとっての不利益となってくる。

米国ほどの速度での規制やサポートは難しいにしても、国家戦略とするならば国内ブロックチェーン事業者を守ることは最も重要な観点ではないだろうか?

これに対してユーザーでもあり、事業者側でもあるイケハヤ氏は「NFT事業の展開においてトークンを発行することは海外では一般的だが、日本では元々の法的要件や規制の不明瞭さからリスクが高く手が出せない。税制が改正される点は業界にはプラスである一方、投資家保護により規制強化により打ち手の幅が狭まることを懸念している」としている。

無限大の実利用という前例のない金融資産となる暗号資産において、これらの規制とは別にビジネス促進を有識者を交えてハイレベルに行う必要があると言えるだろう。

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