VISA(ビザ)は12月16日、米国でUSDC決済を開始したと発表した。
これにより、米国でビザカードを発行する銀行、および加盟店(店舗やEC事業者)のカード決済を取りまとめる銀行(アクワイアラー)は、サークル(Circle)が発行する米ドル建てステーブルコイン「USDC」を使い、決済ネットワーク運営会社であるビザと直接清算できるようになる。なお、ブロックチェーンにはソラナ(Solana)を使用する。
これまでの法定通貨(この場合は、米ドル)を使っていた清算ではなく、USDCを利用することで、カード発行企業はブロックチェーン上での迅速な資金移動、24時間365日の清算といったメリットを享受できるという。一方で、ユーザーの利用体験に変わりはない。
すでに初期の取り組みはスタートしており、本格展開は2026年の予定だ。
またビザは、サークルが開発中のレイヤー1ブロックチェーン「Arc(アーク)」のデザインパートナーでもある。アークは現在、パブリック・テストネット段階にあり、ビザはアークが正式稼働した後、自社ネットワーク内でのUSDC決済にアークを活用するとともに、バリデータノードの運用も計画している。
グローバル決済ネットワークがブロックチェーンにシフト
ビザと聞くと、多くの人は「カード会社」をイメージするだろう。だがそれはカード利用者が接する一面に過ぎず、その実態、本質は「グローバル決済ネットワーク」だ。世界を網羅する自社ネットワークを構築し、日々、大量の決済を処理している。
ビザがカード発行会社、そしてアクワイアラーとの清算にUSDCを利用するということは、システム面では、法定通貨の利用を前提としていたグローバル決済ネットワークを、ステーブルコインの利用を前提としたブロックチェーンにシフトすることを意味する。
インフラ面では、自前で構築しているネットワークから、パブリック・ブロックチェーンへ、さらに将来的にはサークルが構築するレイヤー1ブロックチェーンに移行していく構図だ。
つまり、伝統的金融大手がそのビジネスを支える「基盤」をシステム的にも、インフラ的にも既存の仕組みから、ブロックチェーンにシフトさせることになる。
ビザは、今回の「米国向けステーブルコイン決済フレームワーク」の特徴として、以下の3点をあげている。
●週7日決済対応:従来の5営業日ではなく、週7日での決済を可能にし、銀行やフィンテック企業のスピードと流動性を改善
●流動性およびトレジャリー管理の高度化:銀行参加者向けに、自動化された次世代型トレジャリー運用を実現
●相互運用性:従来の決済レールとブロックチェーン基盤を橋渡しする
今回の取り組みは、これまで世界各地で展開してきたビザのステーブルコイン決済パイロットの実績を基盤としている。リリースによると、11月30日時点で、ビザの月間ステーブルコイン決済量は年換算で35億ドルを突破したという。
また、ブロックチェーン的な観点では、サークルの独自L1であるアークへの移行が予定されているとはいえ、ソラナが選択されたことは要注目だ。ネットワークの規模で言えばイーサリアム、金融での利用で言えばアバランチなどもあるが、決済の高速性、取引手数料の低さ、USDCの運用実績などからソラナが選択されたようだ。
2026年、金融のトークン化・オンチェーン化が進み、伝統的金融とブロックチェーン/分散型金融(DeFi)の融合はますます加速すると見られている。今回のビザの動きは、その象徴例と言えるだろう。日本での展開も期待される。
|文:増田隆幸
|トップ画像:Shutterstock
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