ロシア中央銀行(Bank of Russia)は2025年12月23日、暗号資産(仮想通貨)に関する新たな規制提案を正式に発表し、ロシア政府に審議を求めて提出した。この提案は、2026年からの本格運用を目指しており、ロシアの暗号資産政策の方向性を示すものとなっている。
投資家保護と決済の分離
今回の提案の柱は、投資家の属性に応じたアクセス制限と、利用目的の明確な分離にある。 一般投資家(個人)に対しては、知識テストの合格を条件に、流動性の高い特定の銘柄のみ購入を認める。年間購入上限は30万ルーブル(約45万円)に制限される見通しだ。一方で適格投資家(プロ)は、匿名銘柄を除き、より広範な資産への投資が可能となる。
ルーブルの通貨主権を守るため、国内での商品・サービス支払いに暗号資産を用いることは引き続き禁じられる。しかし、西側からの制裁下での貿易を円滑化するため、認可を受けた金融機関を通じた「国際間のクロスボーダー決済」については恒久的な合法化を目指すという。
ロシアではこれまで、暗号資産を禁止したい中央銀行とマイニング産業の育成や税収を重視する財務省との間で長年議論が平行線を辿ってきた。2020年のデジタル金融資産法(DFA)では決済利用が禁止され、その後は実験的なサンドボックスの下で一部の貿易決済が試行されるなど、法的には「グレー」な状態が続いていた。
国際貿易のカギを握る
この提案の意義は、「暗号資産を金融システムの一部に組み込む」ことを中央銀行が認めた点にある。暗号資産を金融システム内で合法的に扱うための明確なルールが示され、暗号資産取引を行う主体をライセンス制の下に置くことや、違法取引に対する法的責任を設ける準備も進めている。法整備の原案は2026年7月までに仕上げられ、2027年には違法な仲介業者に対する罰則が導入される予定だ。
これまでロシアは暗号資産の活用には慎重だったが、国際的な決済ネットワークから排除される中、ビットコインやステーブルコインを「国際貿易の生命線」として活用するために、インフラ整備や投資機会の拡大を通じて市場の透明性と利便性を高めようとする意図が伺える。
|文・編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
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