ビットコインの“キャリートレード”、利回りが半減──ドル連動ステーブルコインにも影響か

ビットコインの“キャリートレード”、利回りが半減──ドル連動ステーブルコインにも影響か

ビットコインの「キャリートレード」の利回りが8月17日以降、半分になったことで、機関投資家のステーブルコインに対する需要は減少する可能性がある。

キャリートレード:金利の低い通貨や市場で資金を調達し、金利の高い通貨や市場で運用することで利ザヤを稼ぐ手法。裁定取引の一種。

ビットコインの1カ月ローリング決済先物のベーシス(現物と先物の価格差)は今週はじめ、マルタに拠点を置く暗号資産(仮想通貨)取引所オーケーエックス(OKEx)において年率換算28%まで上昇。暗号資産デリバティブ調査会社スキュー(Skew)によると、2月以来の高水準となった。

ローリング決済:約定日から一定期間経過した後に順次決済を行う方法

だがこの高水準は48時間も経たないうちに14%まで低下した。つまり、キャリートレードを今始めて、金曜日まで保持すると、年換算の利回りは14%となり、17日の28%から大幅に低下することになる。

キャリートレードは、単独あるいは複数の市場における価格差から利益を得ようとする取引戦略。例えば、スポット市場で資産を買い、先物契約でスポット価格よりも高い価格(プレミアム)で取引されている時に、その資産の先物契約を売る。

しかし、プレミアムは先物契約が満期に近づくにつれて消えていき、決済日には先物価格はスポット価格と同じになる。先物が高いプレミアムになっている時、トレーダーはキャリー戦略を開始し、利益を確定する。

プレミアムが低下

先物市場では通常、スポット市場よりも高い価格(プレミアム)で取引が行われ、価格差は価格上昇時に広がる傾向がある。

ビットコイン価格が9000ドルから1万2000ドルに上昇し、ほぼその水準にとどまっていた7月後半、年換算のプレミアムは約9%から27%に上昇していた。

トレーダーは、17日にビットコインをスポット市場で買い、オーケーエックスで先物契約を売ることで、年率換算で28%の利回りを確定できた。今、同じことをしても利益は出るが、利回りは半分になる。

キャリー戦略の利回りの低下はまた、テザー(USDT)のようなドル連動型ステーブルコインに対する需要の低下にもつながる可能性がある。

「ステーブルコインは資金調達のための通貨として幅広く使われており、機関投資家からの高い需要が存在している」とスキューのエマニュエル・ゴー(Emmanuel Goh)CEOは話す。実際、キャリートレードは今年、ステーブルコインの発行高が急増したことの主な理由の一つだ。

ステーブルコインに与える影響は?

17日、DeFi(分散型金融)サービスのコンパウンド(Compound)でテザーを借りる際の利子は年換算で6.94%だった。

キャリートレーダーが17日にコンパウンドからテザー(USDT)を借り、8月の満期日となる次の金曜日(21日)までキャリートレードを行った場合、年換算で約21%の純利益を生み出すことになる(キャリートレードの利回り28%からテザーの借入コスト6.94%をマイナス)。

同じ戦略を当記事執筆時に実行すると、純利益は6.3%。今、テザー(USDT)の借入コストは7.68%、オーケーエックスでの先物は14%のプレミアムで取引されているからだ。

簡単に言うと、キャリートレードの魅力はより小さくなった。そのため、スキューが指摘した通り、機関投資家のステーブルコインに対する需要は減少する可能性がある。

プレミアムは48時間で急激に減少したが、その理由としては、ビットコインは1万2000ドルを超えたものの勢いは続かず、結果として大きな価格下落の懸念が生まれたことが考えられる。多くのトレーダーがキャリートレードを行ったため、先物の売りが増え、プレミアムが減少した可能性もある。

先物がスポット価格よりも安く取引される場合には、逆のキャリートレードを行う。つまり、トレーダーは先物を買い、スポット市場でショートポジション(売り待ちポジション)を取る。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:Pixabay
原文:Stablecoin Demand May Drop if Traders Abandon Bitcoin ‘Cash and Carry’ Strategy

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