デジタル人民元、テスト運用に12万個のウォレットを開設:中国人民銀行副総裁

170億円の取引

デジタル人民元のテスト運用のために中国人民銀行は、深セン、蘇州、雄安の3都市で11万3300の個人向けデジタルウォレット、8859の企業向けデジタルウォレットを開設した。

10月5日、スイフト(SWIFT:国際銀行間通信協会)が主催した国際会議「サイボス(Sibos)2020」にオンラインで登壇した中国人民銀行の範一飛(ファン・イーフェイ)副総裁はそう語った。

テスト運用が行われた4月から8月の間に310万件、11億人民元(約170億円)の取引が行われ、商業利用で最も広く使われた中央銀行デジタル通貨(CBDC)となったと副総裁は述べた。

顔認証、バーコードスキャン、非接触決済を備えたデジタル人民元のユースケースは6700種類以上に及び、副総裁によると、ユースケースには、小売業、サービス業、交通機関、公共料金の支払い、公的サービス、深セン市の医療従事者に贈られた謝礼金などが含まれるという。

地政学的パワー

デジタル人民元は、デジタル通貨/電子決済(DCEP)とも呼ばれ、中国は2014年にデジタル通貨研究所を設立したときから、暗号資産に関連した技術を使って決済を近代化し、ドル基軸の国際貿易ネットワークを回避し、地政学的パワーを発揮しようとしている。

「暗号資産(仮想通貨)から法定通貨を守り、通貨主権を守るためには、中央銀行が新しい技術で紙幣をデジタル化することが欠かせない必要」と副総裁はデジタル人民元の重要性を強調した。

デジタル人民元は、観光での活用も検討されており、2022年に北京で開催される冬季オリンピックでの試験導入も計画されていると中国人民銀行は4月、深セン、蘇州、雄安、成都での試験導入を発表した際に明らかにしている。

また試験導入は北京、長江デルタ地域、天津市、河北省、広東省、香港、マカオにも拡大しており、中国商務部は8月、将来的には同国中部と西部にも展開する可能性があると述べた。

翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:Shutterstock
原文:China Central Bank Official Reveals Results of First Digital Yuan Pilots