ビットコインの韓国プレミアムが上昇──個人の買い意欲とファンドの裁定取引

ビットコインの韓国プレミアムが上昇──個人の買い意欲とファンドの裁定取引

韓国の取引所で取引されるビットコインの価格プレミアムが上昇し、2年ぶりの高水準に達している。個人投資家の買い意欲と、トレーダーが価格差を利用して利益を得る裁定取引が、「韓国プレミアム」を押し上げているかっこうだ。

アナリストやトレーダーは、一部のトレーダーが裁定取引のチャンスにつけ込み、短期的な価格のボラティリティにつながる可能性があると警告している。

韓国のキムチにちなんだ「キムチプレミアム」と呼ばれるが、ビットコイン価格がアジアの取引時間中に時に下落する要因とも言われる。一部のトレーダーが、韓国に拠点を置いた暗号資産取引所でビットコインをより高い価格で売却しているのだ。

リアルタイムの取引データ追跡サイト「scolkg.com」によると、当記事執筆時点で、韓国の取引所「アップビット(Upbit)」と「バイナンス(Binance)」でのビットコインの取引価格差は、4.15%の144万4941ウォン(約14万円)。2018年初め以来の価格差だ。

最大の売りはアジア時間で起きる

ブロックチェーン分析のクリプトクワント(CryptoQuant)がまとめたデータでも、韓国の取引所と他の市場との価格差が4日時点で6.18%まで広がったことがわかる。同日、韓国最大級の暗号資産取引所「ビッサム(Bithumb)」に3001ビットコインが流れこんだ。

「最大の売りがアジアの取引時間中に起こったことは明確だ」とコメントするのは、分析企業のエフィシェント・フロンティア(Efficient Frontier)の幹部、アンドリュー・ツー(Andrew Tu)氏だ。

カルガリー大学の研究者らによれば、「キムチプレミアム」が最初に現れたのは2016年初め。同年1月から2018年2月の間、キムチプレミアムは平均で4.73%で、2018年1月に最も高い54.48%を記録した。

時に並外れて拡大するこの価格差には、歴史的背景や経済状況、規制環境などの複数の理由が存在する。

個人投資家のかけこみ需要

韓国における20%の暗号資産税の導入の遅れは、今回のビットコインブームを強める要因にもなっているのではないだろうかと、香港に拠点を置く暗号資産貸付企業、バベル・ファイナンス(Babel Finance)の投資・取引担当エグゼクティブディレクター、シモンズ・チェン(Simons Chen)氏は述べる。一部のトレーダーが、2022年の税導入前に暗号資産を購入しようとする動きが強まっている可能性があると、チェン氏は指摘する。

韓国では、個人投資家は韓国国籍を持たないユーザーが使用できない取引所で暗号資産を購入する。従って、グローバル市場の相場と価格が乖離する現象が起こる。

「韓国政府は、取引所が外国人にサービスを提供することを禁止している」と、CoinDeskのシニアマーケットレポーター、ダニエル・コウリー(Daniel Cawrey)が書いた書籍『Mastering Blockchain』には記されている。「また韓国には、国外に出ていく資金の量を制限する資本規制が存在する」という。

東京に本社に置く投資会社のアンカー・バリュー(Anchor Value)で最高投資責任者を務めるジェイソン・キム(Jason Kim)氏は、韓国の暗号資産市場における機関投資家の欠如を指摘する。

つまり、市場は主に、より頻繁に取引所を利用し、値上がりの度に「FOMO」のトレンドに従う個人投資家によって動かされているという。価格のボラティリティ(変動性)が高まる可能性がある。個人で暗号資産を購入する人たちは、自国の通貨ウォン(KRW)を使うことができるので、購入は容易だ。

FOMO:Fear of Missing Outの略で、取り残されることへの恐れの意味

「韓国の取引所にはBTC/KRWのペアがある」と、クリプトクワントのキ・ヨン・ジュ(Ki Young Ju)CEOは語る。「銀行口座と取引所での預金口座を統合して、KRWでビットコインを買うのは簡単だ。オンラインバンキングを通じて、数回クリックするだけでビットコインを買うことができる」

残された投資手段としてのビットコイン

韓国プレミアムを引き起こす背景には、文化的理由があると主張する専門家がいる。

「朝鮮戦争後の荒廃から立ち上がった韓国においては、経済が成長したのと同じように、短期間で裕福になろうという精神がベースになっている」とアンカー・バリューのキム氏は言う。「不動産などの伝統的なハイリターンの投資オプションが大半に人にとってあまりに高すぎるものとなってしまった後、多くの人がビットコインや暗号資産への投資に乗り出したが、これらはわずか数年で、ほとんどゼロから高騰した。

これらすべての要素が、2019年後期以降ほとんどなくなっていた「キムチプレミアム」を呼び戻す要因となった。

韓国で最も人気の検索エンジン「Naver」における、「ビットコイン」のキーワード検索検索は、12月中旬に最高水準に達した。また、ビットコイン価格がに3万3000ドル(約339万円)を超えた後にも急増した。

韓国の主要取引所における取引高は今月初め、過去30日間で最も高い水準まで増加。

上海に拠点を置くブロックチェーンコンサル企業、ブロック72(Block72)のパートナー、シンハエ・リー(Sinhae Lee)氏は、「ここ数週間で『キムチプレミアム』が目立つようになった」と語る。「韓国の取引所へのKRWの預け入れは増加している。個人投資家は、ビットコインの強力な値上がりを見た後に市場に参入しているのだろう」

ヘッジファンドの裁定取引

ニューヨークのフィンテック、シンディケーター・アナリティクス(Cindicator Analytics)が2018年にまとめたレポートによると、過去の「キムチプレミアム」出現時には、トレーダーが複数の市場の価格差を利用して利益を得る裁定取引を行うことは難しかった。資本統制と、韓国の取引所における高い取引コストが理由だ。

しかし、大量のビットコインが、韓国の取引所に複数回にわたって流れ込んでいる。熟達したトレーダーは、今回の強気市場で裁定取引を活用することができていると、一部の市場関係者は指摘する。最も最近では、クリプトクワントのオンチェーンデーターアラートが5日、合計で1882ビットコインがビッサムに流れ込んだことを明らかにしている。

「『キムチプレミアム』が50%ほどに高まった2017年に比べて、トレーダーは十分な準備をしてきている」と、クリプトクワントのキCEOは述べる。「韓国と韓国以外の取引所を利用して裁定取引を行うヘッジファンドは多くある」

CoinDeskのビットコイン価格インデックスによると、ビットコインの価格が過去数週間のアジアの取引時間中に下落することが見られている。

エフィシェント・フロンティアのツー氏は、「テクニカルに基づくと、しばらくの間、過剰買いの状態が続いている」と述べ、ビットコイン価格が3万3000ドルを超えた直後の下落について説明した。「この水準で主にアジアの売り手が利益を出しつつ、マーケットが調整局面にあるようにも見える」

翻訳:山口晶子
編集:佐藤茂
イメージ画像:Shutterstock
原文:Bitcoin Retail FOMO Brings a Heap of ‘Kimchi Premium’ to S. Korea

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