ビットフィネックスへの文章提出要求、判事が範囲を限定

ニューヨーク州の判事は、仮想通貨取引所ビットフィネックスに対して、疑惑が持たれているクリプト・キャピタルに対する8億5000万ドルの補填とステーブルコインを発行するテザーからの融資に関連する文書の提出を命じた ── だが、即座に、ではない。

ニューヨーク州最高裁判所のジョエル・M・コーヘン(Joel M. Cohen)判事は5月6日(現地時間)午後の公聴会において、問題は認識しているが、4月末のニューヨーク州司法長官事務局による仮差し止め要求は少なくとも部分的にはまだ有効とすべきと述べた。

原告のニューヨーク州司法長官、被告のビットフィネックスおよびテザー、双方の弁護士は差し止め要求が及ぶ範囲について共同、あるいは個別提案を1週間後に行い、最終的には判事が判断する。

コーヘン判事は次のように述べた。

「私が両者に提案したいことは、対面して協議すること。両者とも見識ある人たちのはず。1週間後に我々がここで成し遂げようとしていることについての共同案、あるいは改定案を提案してほしい。もしそれができなければ、個別に提案してほしい」

そう述べつつも判事は「現状の仮差し止めは曖昧で際限がなく、司法長官の意図を正確に示すことができておらず、差し迫った被害を与えかねない。無制限かつ無期限なものになっていると思う」と付け加えた。

このように、判事は証拠開示手続きに関する命令の無効、保留もしくは修正を求める申し立てと、差し止め命令の無効もしくは停止を求める申し立てを拒否しつつ、「差し止め範囲の実質的かつ一時的」な修正を求める申し立てを認めた。

問題の差し止め要求は4月25日、パナマに拠点を置く決済企業クリプト・キャピタル(Crypto Capital)が8億5000万ドルの損失を出した後、ビットフィネックスがテザーから10億ドル近くもの融資を引き出そうとしていたことをニューヨーク州司法長官事務所が明らかにした際に提出された(その後、クリプト・キャピタルの運営者が銀行詐欺の容疑で起訴され、銀行口座が凍結されたことが連邦検察官によって明らかにされた)。

差し止め命令によって、ビットフィネックスとテザーは資金のやりとりに関する全ての文書の提出を求められ、また資金のやりとりは即座に中止させられた。

ビットフィネックスとテザーの弁護士は、仮差し止めの無効もしくは修正を申し立て、ビットフィネックスがテザーから資金を調達できないことは、両社、そして広く仮想通貨マーケットに害をもたらすと主張した(この主張は5月5日のもう1件の申し立てでも繰り返された)。

一方、ニューヨーク州司法長官側の弁護士は、差し止めは「限定的」で、ビットフィネックス、もしくはテザーの運営に大きな影響は与えないと述べた。

管轄権に関する疑問

6日、テザーが発行する米ドルと1対1で連動した仮想通貨テザー(USDT)は証券であり、融資の担保になり得るのかという問題は結論が出なかった。そしてこの結論はニューヨーク州司法長官が本件の管轄権を持っているのか否かの決定にも関連する。

コーヘン判事は「これらが証券か否かという疑問は……被告が言及したそもそもの疑問。取り引きがあったことは分かっている。だが融資に相当するか否かは別問題」と述べた。

ニューヨーク州「マーチン法」のもと、ニューヨーク州司法長官事務所は証券や商品、あるいはそれらの取り引きから生まれた価値を規制し得るとビットフィネックスの弁護士デビッド・ミラー(David Miller)氏は述べた。だが同氏は仮想通貨テザー(USDT)は、証券の定義としてしばしば用いられる数十年前の最高裁判所の判断「Howey Test」の少なくとも2つの要件を満たさないと主張した。

具体的には、一般企業は存在せず、仮想通貨テザー(USDT)を購入した人から利益を得ることはないとミラー氏は述べた。

「我々はテザーの購入者に対して、信託に基づいた責任などを持たない」

一方、コーヘン判事は、ニューヨーク州司法長官に対するビットフィネックスとテザーの責任についてより広く語りつつ、銀行は一般的に顧客が預けたお金を100%保有しているわけではないとするテザーの主張を認めて、以下のように述べた。

「私は銀行が、顧客が預けたお金を即座に全て用意できるわけではないことを理解している」

ニューヨーク州司法長官事務所の弁護士ジョン・カステラノス(John Castellanos)氏は、ニューヨークの住民は流通市場において仮想通貨取引所ポロニエックスを通じてテザー(USDT)を購入できることを理由に、同事務所の管轄権を主張した。

さらにカステラノス氏は「我々は十分な情報を得ている。そして、マーチン法が破られていると信じるに値する理由を持っている」と付け加えた。

ビットフィネックスの弁護士ミラー氏は、テザーは流通市場での販売に責任を持つべきではなく、ポロニエックスは仮想通貨テザー(USDT)と米ドルとの1対1の連動を保証していないと述べた。

だがコーヘン判事は、ニューヨーク州司法長官事務所はまだ証券に関する広範囲な問題を調査する必要があると指摘し、「法執行機関として、規制対象外のビジネスが、マーチン法の対象となる証券を扱っているかどうかを調査することは管轄を超えているとは思わない」と述べた。

ミラー氏はまた、ビットフィネックスは資産が差し押さえられたことをニューヨーク州司法長官事務所に即座に報告したと繰り返し主張した。

仮差し止めがいつ解除されるかは、まだ明確になっていない。コーヘン判事はニューヨーク州司法長官事務所の調査がいつまで続くのか、調査対象となる関連文書がどれくらい存在するかなど、差し止めの解除については検討すべき数多くの問題があると指摘した。

翻訳:Masaru Yamazaki
編集:佐藤茂、浦上早苗
写真:New York Supreme Court image via Nikhilesh De for CoinDesk
原文:Judge Asks NYAG to Narrow Scope of ‘Amorphous’ Bitfinex Document Request