“イーサリアム・キラー”の人気上昇──時価総額はリップルを上回る

時に「イーサリアム・キラー」と呼ばれる暗号資産(仮想通貨)の「カルダノ(Cardano/ADA)」と「ポルカドット(polkadot/DOT)」 の人気が高まっている。

データサイトのメッサーリ(Messari)によると、カルダノの時価総額は9日18時時点(日本時間)、約224億5000万ドルで、ポルカドットが約217億7000万ドル。暗号資産の時価総額ランキングではリップル(XRP)を抜いて、それぞれ4位、5位になった。

最近のDeFi(分散型金融)人気の盛り上がりと、イーサリアムの取引手数料の上昇が原因だ。

使い勝手が悪化するイーサリアム

カルダノとポルカドットの最近の価格上昇は、「特別なこと」ではなく、「イーサリアム・キラー」というストーリーで期待を集めていることが要因と、米CoinDeskが取材した投資家やアナリストは語った。

一般的にDeFiプロジェクトはイーサリアムブロックチェーン上で構築されているが、一部の投資家やトレーダーは、イーサリアムブロックチェーンの利用コストとUX(ユーザー体験)の課題を指摘してきた。

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)は7日にイーサリアムの先物取引をスタートさせた。ブロックチェーン分析企業のグラスノード(Glassnode)によると、イーサリアム価格はCMEでの取引開始後に急騰し、取引手数料も再び上昇し始めた。

24時間移動平均では、イーサリアムブロックチェーンの取引手数料の総額は2月8日14時(協定世界時=日本時間8日23時)、100万3727.15ドル(約1億600万円)となった。

イーサリアムの取引手数料総額(青)と価格(黒)
出典:Glassnode

「イーサリアムは混雑しすぎているようだ。カルダノとポルカドットは多くの人が求める『スケーラブルな(拡張性のある)ブロックチェーンというストーリーに合致』しており、暗号資産市場が最新のアピールポイントを探しているとすれば、まさにこれらがそれに該当する」と、マルチコイン・キャピタル(Multicoin Capital)のマーブル・ジャン(Marble Jiang)氏は述べた。

米テキサス州に拠点を置く暗号資産ファンドのマルチコイン・キャピタルは、ソラナ(Solana)やアルゴランド(Algorand)をはじめとする「イーサリアム・キラー」と言われる多くの暗号資産に投資してきた。

DeFi人気とビットコインの高騰

イーサリアムの価格上昇を後押ししている理由の1つは、DeFi人気の高まりだ。

DeFi Pulseのデータによると、DeFiの預かり資産(TVL:Total Value Locked)は現在、約361億3000万ドル(約3兆8000億円)にのぼるという。

Aave、ユニスワップ(Uniswap)、メーカー(Maker)、シンセティックス(Synthetix)、コンパウンド(Compound)をはじめとする時価総額上位のDeFiプロジェクトの多くは、イーサリアムブロックチェーン上に構築されている。

イーサリアムブロックチェーンは、ますますコストがかかるものになっているが、マルチコイン・キャピタルのジャン氏によると、もう1つの要因は、テスラ(Tesla)が15億ドル(約1580億円)のビットコイン投資を発表した後、ビットコインが史上最高値を更新したことだ。

「まさに今、テスラの発表によって暗号資産市場には大幅な価格上昇が生まれており、イーサリアムのショート(売り持ち)ポジションを清算しようとする人は、おそらく取引ごとに50~100ドル相当の取引手数料を支払うことになる」とジャン氏は述べた。分散型デリバティブプラットフォームを利用する「小規模な個人投資家にとっては、もはや適切な金額とはいえない」と付け加えた。

取引手数料の予測サイト「gasnow.org」によると、当記事執筆時点での取引手数料の平均は307ギガウェイ(Gwei)だった(1ギガウェイは、10億分の1イーサリアム)。

開発が進むカルダノ、ポルカドット

暗号資産ベンチャーキャピタルのアウトライアー・ベンチャーズ(Outlier Ventures)が2月はじめに発表したレポートには、カルダノはイーサリアムに続いて2番目に積極的な開発作業が進められているという。一方、ポルカドットは昨年7月~11月にかけて、月間のコア開発者の数が倍増したことが記されていた。

「市場があらゆる点でDeFiに注目していたことを考えると、最近のカルダノの上昇は見過ごされていたのかもしれない。ファンダメンタルズは非常に好調だ。同様にポルカドットも開発が活発化しているプロトコルの1つとして注目されており、その相互運用性やDeFiでの活用はすでに実証されている」とロンドンのプライムブローカー、ベクワント(Bequant)のデニス・ビノコウロフ(Denis Vinokourov)氏は述べた。

メッサーリによると、ソラナ(Solana/SOL)、コスモス(Cosmos/ATOM)、アルゴランド(algorand/ALGO)など、他の主要スマートコントラクト・プラットフォームの暗号資産も大幅な上昇を見せている。

|翻訳抜粋:石田麻衣子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Sofiya Levchenko/Unsplash
|原文:Cardano, Polkadot Market Caps Surpass XRP as Some Bet on Alternatives to Ethereum