- シンガポールの大手銀行DBSは、イーサリアム・ブロックチェーン上でトークン化された仕組債を発行し、複雑な金融商品に対する道を開く。
- 同行が新たに発行する暗号資産連動型パーティシペーション・ノートは、デジタル資産価格の上昇時に現金で支払いが行われる一方、下落リスクを抑制する。
- 1000ドル単位にトークン化することで、DBSは同ノートの代替性と取引の容易性を高め、ファミリーオフィスやプロの投資家に訴求する商品としている。
シンガポール最大の銀行であるDBSは、イーサリアム・パブリック・ブロックチェーン上でトークン化された仕組債を提供することにより、同行のブロックチェーン戦略の歩を進めた。これにより、かつては個人顧客のみが利用できた複雑な金融商品へのアクセスが拡大する。
DBSは現地時間8月21日のプレスリリースで、シンガポールの現地取引所ADDX、DigiFT、HydraXを通じてこれらの商品を販売すると述べた。これは、DBSが自社顧客以外の認定投資家や機関投資家に対してトークン化された商品を提供する初めての事例となる。
今回初めて発行される商品は、暗号資産価格の上昇時に現金で支払われる一方で、下落リスクを抑制した、暗号資産(仮想通貨)連動型のパーティシペーション・ノートである。
仕組債は伝統的に最低投資額が10万ドル(約1460万円、1ドル=146円換算)であり、カスタマイズされることが多く、代替不可能な性質を持っている。
DBSは、各証券を1千ドル単位にトークン化することで、証券の代替性を高め、取引を容易にし、ポートフォリオ管理の柔軟性を高めると述べている。
DBSの発表によると、投資家がデジタル資産のポートフォリオに高度な投資戦略を取り入れようとしているため、こうした証券への需要は堅調だという。
2025年上半期、DBSの顧客はこれらの証券を含む10億ドル(約1460億円)以上の取引を実行し、取引量は2025年第1四半期から第2四半期にかけて約60%増加した。
DBSは、シンガポールで急速に成長しているファミリーオフィスやプロの投資家にとって、これが特に有益であると考えている。同発表によると、シンガポールのシングル・ファミリーオフィスの数は2024年に2000を超え、前年比43%増となった。
この動きは、シンガポールがトークン化金融のハブとしての役割を深める中で起きた。シンガポール通貨庁(MAS)は、債券、FX、ファンドにわたる資産のトークン化を探求するプロジェクト・ガーディアン(Project Guardian)を通じて業界の試験的な取り組みを推進しており、また、グローバルの流動性をプールするためにグローバル・レイヤー・ワン(Global Layer One)のようなクロスボーダーのインフラを開発している。
DBSはこれらの取り組みに最も積極的に参加している銀行の一つであり、多くの場合、パブリックチェーンに先立ち、パイロット版として許可型ブロックチェーンを使用している。
当初は暗号資産(仮想通貨)連動債に焦点を当てているが、DBSはより伝統的な株式連動債や信用連動債もトークン化すると述べている。
「資産のトークン化は、金融市場インフラの次のフロンティアである」と、同行の外国為替・デジタル資産部門責任者であるリー・ジェン(Li Zhen)氏は発言した。
「我々による最初のトークン化商品は、デジタル資産に対する機関投資家の高まる需要に対応している。この取り組みにより、より幅広い投資家が我々のデジタル資産エコシステムを活用して、この資産クラスを選択肢として考えていけるようになる」とジェン氏は続けた。
|翻訳・編集:T.Minamoto
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|原文:DBS Launches Tokenized Structured Notes on Ethereum, Expanding Investor Access


