中央管理者を介さずに金融サービスを提供する「DeFi(分散型金融)」が、グローバルな金融の構造に影響を与え始めている。市場規模は1500億ドル(22兆円)を超え、その影響力はますます拡大している。
日本のWeb3ビジネスの加速を目指すN.Avenue clubは8月28日のラウンドテーブルのテーマに、DeFiを採用。「脱中央集権」「トラストレス」「リアルタイム金融」をキーワードに、その現在地と新しいビジネス機会について考えた。
当日は、DeFiをリードするグローバルプロトコルAave Labsの創業者や既存金融の専門家らが登場。規制やセキュリティといった実務面にも踏み込み、DeFiの本質と可能性を多角的に議論した。
N.Avenue clubは、国内外のゲスト講師を招いた月1回の「ラウンドテーブル(研究会)」のほか、会員企業と関連スタートアップや有識者との交流を促す「ギャザリング」などを行っている。
ラウンドテーブルは、会員のみに向けたクローズドなイベントのため、ここではその一部をレポートする。
課題は法規制の不確実性と適用範囲
メインセッションの前に、CoinDesk JAPAN編集長の増田隆幸が議論を進めるにあたっての整理としてDeFiの基本的な情報や状況を解説した。
マーケット規模は、2021年初に約15億ドル(2220億円)だったものが、2025年8月には約1500億ドル(22兆2000億円)超に拡大。2021年のブームの後、2022年に急落したが、2024年以降、回復基調にあると述べた。
ただし、課題は、法規制の不確実性と適用範囲で、現行の法規制がDeFiを想定しておらず、新しい取り組みが適法かどうかがビジネスを展開するうえでのハードルとなっているとした。
Aaveファウンダーがユースケースを紹介

2017年にEthLendとしてスタート、2020年にリブランディングしたAaveは、DeFiレンディング分野のリーディングプラットフォーム。ファウンダーのスタニ・クレショフ氏によれば、預かり資産残高は600億ドル〜700億ドルに到達している。
人気のあるユースケースはレンディングと借り入れで、借り入れは、Aaveプロトコルに資産を預けているサプライヤーの約30%が行っていると述べた。
また直近では、トークン化資産を担保にステーブルコインを借り入れることができる新サービス「Horizon」に注力。機関投資家や既存の金融プレーヤーとの連携を図っていると語った。
みずほFGが実証実験で確かめようとしていること

みずほフィナンシャルグループ(FG)デジタル戦略部ディレクターの小野峰寛氏が、みずほFGの取り組みについて紹介。
みずほFGでは、ビジネス化に向けた議論の対象は大別して2つ、──「デジタル証券」と「価値安定資産」(ステーブルコイン、トークン化預金)──を設定していると述べた。
また「DeFi研究会」での実証実験にも触れた。「限定されたDeFIになるのでは?」との疑問に対しては、まずは、日本で安心・安全にDeFiが展開できる環境を作り出すことが最大の目的と述べた。
米国の老舗資産運用会社がトークン化MMFに取り組む理由

75年以上の歴史を持つ資産運用会社フランクリン・テンプルトンの日本法人でデジタル&フィンテック / ビジネス開発を担当する湯浅光則氏は、同社が2021年に世界で初めて発表したトークン化MMFなど、トークン化資産とDeFiの関わりを紹介した。
ちなみに同社がブロックチェーンに着目したのは、バックフィスの効率化からで現社長のジェニー・ジョンソン氏がバックオフィスのオペレーションを率いていた時代に始まったと明かした。
トークン化MMF「Benji」は、継続的に機能改良を続け、現在では機関投資家は、保有時間に応じて秒単位で利回りを受け取ることができるという。今後はブリッジ資産、あるいは担保資産としてDeFiでの活用が期待できると述べた。
DeFiを活用したビジネス機会とその実現のための課題は?

ラウンドテーブルの後半は、参加者全員が6つのテーブルに分かれてディスカッションを行った。テーマは①「DeFiを活用したビジネス機会は?」②「その実現に向けた乗り越えるべき課題は?」。
6つのテーブルからは、「課題についてはテクニカルなものより、社内理解、パートナー理解をどう得るかのほうが難しい」「法が未整備だと利用者保護の観点がグレーで、ビジネスとして大きくなったときに、当局に目を付けられないかという懸念がある」といった感想が聞かれた。
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N.Avenue clubは、国内外のゲスト講師を招き、毎月、開催している「ラウンドテーブル(研究会)」を軸に活動する、日本のWeb3ビジネスを加速させる一助となることを目指す会員制のコミュニティ。ラウンドテーブルのほかにも、会員企業と関連スタートアップや有識者との交流を促す「ギャザリング」なども行っている。
N.Avenue club事務局は、Web3ビジネスに携わっている、または関心のある企業関係者、ビジネスパーソンへの参加を呼び掛けている。
|文:瑞澤 圭
|編集:CoinDesk JAPAN編集部
|写真:多田圭佑


