金融庁は9月2日、金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ(WG)」の第2回会合を開催した。
今回の主要な議題は、暗号資産の規制を現在の資金決済法から、より投資家保護を重視した金融商品取引法(金商法)の枠組みへ移行することの是非である。
会合では、業界団体から暗号資産市場の現状について説明が行われた後、各委員による意見交換が実施された。その中で、京都大学の岩下直行教授(元日本銀行金融研究所)が、現状のまま一部の暗号資産を金商法の世界に取り込むことに強い懸念を表した。
岩下教授は、ビットコインやイーサリアムといった主要な暗号資産については、金商法と資金決済法のどちらで規制されても「そんなに大きな差はない」とし、法移管そのものを否定する立場ではないことを示唆した。
しかし、その上で、特に国内のIEO(Initial Exchange Offering)案件の実態に警鐘を鳴らした。

⽇本暗号資産ビジネス協会(JCBA)が提示した国内IEO案件リストを例に、そのほぼ全てが公募価格を大きく下回り、中には90%以上も価値を失い「ほぼ無価値になっている」と指摘。このような壊滅的な実績を持つ商品を、一般国民向けの投資対象として金商法の枠組みで扱うことに対し「正気の沙汰とは思えない」と厳しく続けた。
さらに、これらの投資の本質は、事業への期待というより、上場直後の短期的な値上がり益を狙う投機的なゲーム(「ネタ」「ノリ」)に近いと分析し、伝統的な金融とは明確に「隔離」して扱うべきだと提言。安易に法規制の対象とすることが、国による「お墨付き」と誤解されかねないリスクを訴えた。
なお、CoinDesk JAPANは1回目の会合後、岩下教授に取材を申し込んだが、教授は「私の考えにつきましては、公開されている審議会での発言記録に集約されております」として、これを辞退した。
会合では、前日1日に金融庁が事務局説明資料として提示した、規制を「金商法に一本化」する案についても議題に上がり、様々な意見が交わされた。
|文:栃山直樹
|画像:金融庁から、Shutterstock


