デジタル証券(セキュリティ・トークン、ST)の発行・管理プラットフォームを運営するデジタル証券株式会社は9月29日、都内で新サービス「renga」に関する記者発表会を開いた。STの組成から運用、販売、セカンダリー取引までカバーする一気通貫型サービスで、同社代表取締役CEOの山本浩平氏によるプレゼンテーションの様子は既報の通りだ。
関連記事:デジタル証券株式会社、一気通貫型サービスで個人投資家向けセキュリティ・トークン提供開始──「金融商品のコンビニ」を目指す:山本CEO
この日の第二部では、山本氏に加えて、元衆議院議員でタレント・投資家としても知られる杉村太蔵氏をゲストに迎えたトークセッション「変わる資産運用の“あたりまえ”─不安な時代に、新たな選択肢を」が行われた。
司会を務めたのは、元TBSアナウンサーの加藤シルビア氏。実は山本氏の妻であり、今年2月の退社後初めて公の場に登場した。加えて、初の夫婦共演ということもあり、会場には多くのメディアが詰めかけていた。加藤氏と杉村氏は旧知の仲で、和やかな雰囲気の中で活発な議論が繰り広げられた。
「個人投資家の逆襲」を支える換金性
セッションの冒頭、杉村氏は今週に投開票が行われる自民党総裁選でも日本の金融市場の停滞が論点の一つになっていると指摘。失われた30年とは「個人も企業も資産を溜め込んだ30年」であったとし、2000兆円を超える家計の金融資産と企業の内部留保600兆円という巨額資金が動かない背景には、バブル崩壊後の恐怖心や従来の投資が持つ「高いハードル」があると分析した。
そのうえで、山本氏が掲げる「個人投資家の逆襲」というテーマは刺激的で面白いと熱弁。国内資本の流れを変える「ゲームチェンジャー」になる可能性を秘めていると述べた。
特に杉村氏が評価したのが、rengaの「換金性」の高さだ。従来のファンド商品では運用期間中の売却が難しく、個人投資家の不安につながっていたと解説。ブロックチェーンの活用により投資家間売買をデジタル完結させる仕組みが、不安要素を解消すると説明した。
4児の母であるという加藤氏も主婦の立場から、子どもの入院費など予想外の出費に備える必要性を実感しているとし、「いざというときに使える」換金性の重要性に同意した。

さらに杉村氏は、航空機や船舶といった高い収益性を持つ優良資産への小口投資が可能になる点も評価。一部の富裕層や機関投資家に限られていた資産を、個人投資家でも少額から保有できるようになることの意義を強調した。
地方からの陳情を変える可能性も?
話題は、地方創生にも及んだ。北海道旭川市出身の杉村氏は、地元の商店街の理事長を務めるなど地域活性化にも関わっている。こうした取り組みを踏まえ、デジタル証券による資金調達が進めば、国に対する陳情の流れも変わる可能性があると指摘。

一例として、旭川から稚内まで新幹線を延伸したいと要望するときに国に陳情するだけでは進まないが、「地元出身者や関係者が資金を出し合い、デジタル証券としてインフラを支えるような仕組みがあれば流れは変わる」と提案。オーバーツーリズムに悩む観光地や地方空港の路線拡充にも応用できるとし「航空機をデジタル証券化して運用する資金調達が可能になれば、地方の空路整備にも新たなお金の流れが生まれる」と熱弁。応援したい地域やプロジェクトに直接投資できることは「ふるさと納税以上のインパクトを持つかもしれない」と話し、社会を変える資金循環の新しい形になるとの見方を示した。
月収貯蓄率が10%超なら投資を
セッション終盤では、投資初心者に向けた具体的なアドバイスも飛び出した。杉村氏は「手取り収入に対する貯蓄が10%以上あれば、上振れ分を投資に回してもいいのではないか」と提唱。
rengaを活用すれば、投資先が上場銘柄だけでなく不動産や航空機、商店街といった多様な資産に広がると指摘し、こうした資産のデジタル証券化は日本経済にとって大きな意味があると述べた。
加藤氏から自身の家計管理について質問された際には「すべて私が握っている」と明かし、毎年正月には自身の万が一に備えて「所有する資産リストを『遺言』として妻に渡している」と紹介。杉村氏のユーモアを交えた語り口に、会場は終始笑いに包まれていた。
|文:橋本祐樹
|写真:記者会見のオフィシャル素材から
|トップ画像:左から加藤シルビア氏、デジタル証券株式会社CEOの山本浩平氏、ゲスト出演した杉村太蔵氏


