グローバル、特に米国で確固たる潮流となっている「トークン化MMF」、広く言えば、金融商品をはじめとする現実資産=RWAのトークン化が日本でも本格化しそうだ。もちろん、ステーブルコインと連携した活用が期待される。
デジタル資産の発行・管理基盤を提供するProgmat(プログマ)が主催する「デジタルアセット共創コンソーシアム」(DCC、会員組織数315)は10月2日、取引のみならず、利回り(運用益)の支払いや決済もブロックチェーン上で完結させ、オンチェーン化のメリットを最大化することを目的とした「オンチェーン完結型STワーキング・グループ(WG)」の共同検討の結果をまとめた報告書を公表した。同WGは3月に共同検討を開始していた。
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さらに、共同検討で示した方向性を踏まえて、「日本版トークン化MMF(マネーマーケットファンド)」の商品組成を目指すとともに、グローバルで進行する「オンチェーン金融」を実現するうえでハードルとなっている既存法制などの課題解決に向けて、事務局として整理を進めると述べている。
「オンチェーン完結型ST WG」の背景と概要
リリースによると、国内のRWAトークン化の代表的な事例であるセキュリティ・トークン(ST、デジタル証券)の発行累計額は2628億円超規模に達しており、2025年中には3411億円超まで拡大することが想定されるという。
ただし、STの大部分を占める不動産STは、すでに証券会社に口座を持つ個人投資家を主なターゲットとし、米国で先行するような機関投資家向けの商品組成は限定的だった。米国では、トークン化MMFの発行残高は72億ドル(1兆800億円、1ドル=150円換算)にのぼるという。

だが日本でも金利が上昇し、投資商品としての債券(特に短期国債)への注目が高まっている。また円建てステーブルコインのまもなくの発行/流通も期待され、「ステーブルコイン×トークン化MMF」の潮流がいよいよ日本にも及んできている。
実際、メガバンクもステーブルコインとRWAトークン化を前提とした「オンチェーン金融」の勉強会を開催している。
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リリースには、DDC「オンチェーン完結型ST WG」の共同検討では「トークン化したMMFや社債を対象に、ステーブルコインを組み合わせて、発行体・投資家間の摩擦の極小化と資金運用効率の最大化が可能な枠組みをデザインし、具体的な商品組成に繋げることを目的としています」と書かれている。

共同検討結果と今後の対応
また共同検討は、国内の「オンチェーン金融」活性化に向けて、短期/中長期で必要なアクションを明示。具体的には、まずは現行法を前提とした上で短期的な商品組成を実現するとしている。
さらに、オンチェーンでの権利移転を円滑化するために「トークン化法」と名付けた“上乗せ法”的なアプローチの整理も実施するとしている。

オンチェーン完結型ST WGの報告書は以下から。https://speakerdeck.com/progmat/wg-dcc-onchain-st
なお、Progmat代表取締役 Founder and CEOの齊藤達哉氏は、報告書の公表に併せて、noteでの詳細な解説も行っている。冒頭には「約1万字の分量と濃厚なリーガルエンジニアリング論に耐えられる、金融マニアな方が対象です。(万人向けではありません!)」とあるが、ステーブルコイン×トークン化MMFの課題や実現に向けた手法が詳しく書かれている。
|文:増田隆幸
|画像:リリースより


